私が初めてシュプールを描いたのはいつだっただろうか。きっと3歳ぐらいの時。スキーを履いて初めて滑った時だろう。私の記憶にはない。転んで泣いていたのか笑っていたのか。当時はプラスチック製のおもちゃのようなスキーで滑って転んでをくり返しながら遊んでいた。楽しかった。もうあれから何十年と滑り続けて、幾つものシュプールを残してきた。そして今も1年中スキーのこと考えるほど夢中になっている。
さて、スキーは技術だけで語れない、いろいろな文化や歴史がある。私はこれまでスキーの発祥は新潟県上越市(旧高田市)金谷山スキー場にレルヒ少佐が伝授したと習ってきた。それは日本スキー教程(スキー指導者資格を取得するためのバイブル)に書かれていた。そしてその続きは知らないままで記憶が止まっていた。2021年オリンピックが終わり、そのタイミングで北海道名寄市に転勤することに なった。「先生の専門はスキーですね、レルヒ中佐ですね」と声をかけてもらった。「えっレルヒ中佐? レルヒは二人いるのか?」その後他の方に聞いてもレルヒ中佐だという。そこに私のスキーに対して振り返るスイッチが入った。スキーのことについて振り返ろうと。ずっと前ばかり見て滑っていたのだから。
清水幸子(しみず ・さちこ)
幼少期は関西で育ち、父親の影響で3歳からスキーをはじめる。スキー技術の習得と研究のため上越教育大学大学院へ進学。スキーのバイオメカニクスの研究に打ち込むとともに、スキー技術選にも挑戦。その後専門学校や短大、大学でスポーツ科学の教員として勤務しながら子どものスキーやジュニアスキー選手の指導に携わる。2021年から北海道にある名寄市立大学保健福祉学部教養教育部に所属。スポーツ理論やスポーツ実技、スキー実技などで教鞭をとる。現在は名寄のスキーの歴史や、クラシックルートの調査研究も行なっている。
引用:THOUSANDS OF BOOKS