名寄ピヤシリスキー場は今ではとても貴重な天然雪100%のスノーパークである。 私のスキー経験の9割は本州での経験であり、本州では30年ほど前から多くのスキー場で降雪機が導入され、11月ごろから順次オープンしていくのが恒例になっている。また雪不足を補うため、最近では1月に入っても夜間に降雪機が稼働している。スキーヤーである私にとってはゲレンデ環境が良くなることは都合が良い。しかし、運営会社としては資金面を圧迫し、経営がより一層難しくなっているという。そして降雪機も温暖化に対応し、また雪質の良いマシンに変わりつつある。スマートフォンでいう第2世代に入っている。今までの旧マシンでは、重く氷になりやすい人工雪であった。そのため、昼間に溶けてしまった雪が夜に冷やされ、アイスバーンなり、日に日に硬さが増していく。しかしここ最近のものは、雪らしくサラサラとしている。本州なのに北海道のような、または海外の標高の高いリゾートのような雪質が味わえる。正直すごく滑りやすくなった。
さてここまで書いて、次は名寄ピヤシリスキー場についてである。最新鋭の降雪機で作った人工雪なのか極上の天然雪なのかわからない現象が起きる。本州からきた初めての利用者はそう感じるのではないだろうか。「雪質日本一」の名寄市である。その雪質を売りにしているのだから、きっと何かあるに違いない。しかし降雪機は見当たらない。そして最新のニョキっと伸びたポール型の降雪機もない。コース幅いっぱいに雪がある。自由にシュプールが描ける。降雪機なしでこの雪質は他にないだろう。街から近く、標高も低いため身体が疲れにくい。午後になっても他のシュプールが気にならないちょうど良いコンディションが保たれている。このようなスキー場は北海道にはまだ多く残っていると聞いている。 本州で滑っていて、北海道から滑りに来たという人に出会わないの理由が分かった気がする。長いコースは本州にはたくさんあるが結果的にノンストップで滑れるのは平日の数本であって、すぐに混んでしまい減速しながら滑る状況になる。しかし北海道ではちょうど良い賑わいの中、一日中スムーズに滑れるのである。優雅である。
清水幸子(しみず ・さちこ)
幼少期は関西で育ち、父親の影響で3歳からスキーをはじめる。スキー技術の習得と研究のため上越教育大学大学院へ進学。スキーのバイオメカニクスの研究に打ち込むとともに、スキー技術選にも挑戦。その後専門学校や短大、大学でスポーツ科学の教員として勤務しながら子どものスキーやジュニアスキー選手の指導に携わる。2021年から北海道にある名寄市立大学保健福祉学部教養教育部に所属。スポーツ理論やスポーツ実技、スキー実技などで教鞭をとる。現在は名寄のスキーの歴史や、クラシックルートの調査研究も行なっている。
引用:THOUSANDS OF BOOKS