今回は2020年に描いた話。
筆者たち夫婦は、下川町内で自給自足や地産地消による「持続可能な暮らし」を目指し、馬の糞(ふん)も活用しながら菜園作りをしている。馬を飼っているのも、その延長上にある。
今後、自給菜園を若干、拡大できないか―という考えもあるし、町内で菜園を作る友人も多い。(その後筆者たちは菜園を拡大したが今は小規模化しながら身近なものを活用)
筆者の飼う、ドサンコ(北海道和種馬)のハナで土を耕して畑を作れないか―と思う。それができれば、どれだけ作業が楽しいことか。
プラウなど馬耕(ばこう)に必要な道具を時々見るが、いずれも「ばん馬」などの大型馬用ばかり。ドサンコ用は見当たらない。
そこで、北海道博物館にドサンコ用の馬耕農具」がどこかに現存しないか、問い合わせた。
道内で使われた農具に①徳島などの移住者が使用した和製の長床犂(ちょうしょうすき)②主に明治以降に広まった和製の短床犂③アメリカから輸入、または国内鍛冶技術で忠実に再現した犂「プラウ」(乗用ではなくハンドルを握るのが一般的)がある。
プラウには①荒れ地を開墾する3頭引きプラウ②既に耕した農地に使う1頭引き用プラウ③中間的な2、3頭用の兼用プラウがある。プラウと耕した後の土の塊を砕く「ハロー」がセットで使われた。
道内でプラウを引くのに使われた馬は、明治初期にプラウと一緒に輸入した外来馬、またはドサンコと外来馬を掛け合わせた「農耕馬」だったようだ。母馬がドサンコで、やや大型のドサンコにプラウを引かせた話は残っていると言う。
プラウ馬耕に必要な馬具は①ガラ・わらび形(首につける牽引用)②せづり(専用の鞍)③くつわ④手綱⑤胴引き(牽引用)⑥プラウに付ける引木となる。
作っていた鉄工所や馬具製造所は、高齢化が進み、全てを作るのは困難。馬の体格に合う古いものを譲ってもらうのが現実的だそう。一方で、期限・条件付きで借りられるものもあるようだ。
これらを踏まえると、通常の純血ドサンコ1頭での馬耕は、難しいことがわかる。だが、家庭菜園など小規模な畑で、既に耕したことがある場所を、再び耕す作業ならば、小型馬用の道具と馬耕技術さえあれば、可能な気がする。
この夢を諦めずに持ち続けようと思う。いずれ道が開けるかもしれない。
愛馬ハナでなんとか畑を耕せないか。そんな気持ちで耕す前の畑を乗馬で走り回ってみた。運動にはなったし、雑草は伸びづらくなったかもしれないが、やはり馬耕には道具が必要のようだ。
そして…その後道は開けることになったのだが、次回以降に伝えたい。



<今回は名寄新聞の2020年5月19日付掲載記事を基に再構成しました>
道北の暮らしをつなぐ馬の過去記事はコチラから