下川 中村さん夫妻、えりすぐりの6種提供、クラフトビール店プレオープン、自家醸造開始に向け準備中

【下川】

町内在住の中村隆史さん(50)・紀久美さん(49)夫妻は、町内錦町商店街に店舗を構え、店内でクラフトビールを醸造して提供する「しもかわ森のブルワリー」の開業を目指している。ビールの醸造はこれからだが、それに先立ち9月30日から、クラフトビールの店「ビアスタンドエール」をプレオープンする。
 中村さん夫妻は共に札幌市出身、前職は隆史さんが半導体エンジニア、紀久美さんが事務職。2人は市内の同じ美容室に通っていた縁で出会い、互いに酒や絵画が好きだったことなどから関係を深め結婚。家庭菜園を通して、農業や地方の暮らしに興味を持ち、隆史さんがクラフトビールで下川町の起業型協力隊(任期最長3年)に応募、採用され、昨年4月に紀久美さんと下川町へ移住した。
「地方で農作物を生かした事業をしようと思い、互いに酒が好きなので、身近な農作物で醸造して提供しようと考えた。ビールは醸造のハードルが低く、消費者にも気軽に飲んでもらえる。ビールで人と人をつなぎ、笑顔あふれる暮らしに貢献したい」と言う。
醸造を兼ねた店舗には、昨年11月末で閉業した「味よし食堂・スナックスワン」の店舗を活用した。長く住民に親しまれてきた店で、昨春に中村さん夫妻が食事に訪れて店主と挨拶を交わし、顔見知りになった。
店主は数年先に閉業を考えていたが、中村さん夫妻が開業する物件を探していることを知り、店舗を譲ることを決意。昨年7月から具体的な話が進み、今年5月に中村さん夫妻に受け継がれた。
中村さん夫妻は「酒を飲む店なので徒歩で行きやすい場所にあり、一人でも気軽に立ち寄ってもらえる店にしたかった。下川町は徒歩で移動できるコンパクトシティーで、味よし食堂さんは醸造設備を設けられる広さがあり、商店街で立地条件もよく、店主夫妻が親切で相談しやすかった」と振り返る。
7月下旬から店舗の改装を開始。森林のまち下川らしい店となるよう、壁や床、天井、カウンター、テーブルなど、あらゆるところに地元産のシラカバ、ミズナラ、セン、ハンノキ、トドマツなどを活用した。
道内産ホタテの貝殻を使った壁のしっくいは、ワークショップを開き町民と一緒に塗った。床板のオイル塗りも町民有志に手伝ってもらった。ロゴデザインは町内在住者に依頼。「町民と一緒に作っていく店」と語る。
カウンターにある冷蔵庫には、内部に樽のままのビールを入れ、冷蔵庫外側にあるタップから注いで提供する。6種類のビールを、おいしい状態で楽しむことができる。
醸造施設も整備。醸造は麦汁の仕込みに寸胴鍋、その発酵に冷蔵庫を使い、一般的な設備より費用を10分の1に抑えられる『石見式』を導入し、少量多品種の生産を目指す。熟成用の大型冷蔵庫も設けている。
醸造技術は昨年、隆史さんが札幌で研修して習得し、今年7月に酒類製造免許を申請。早くて12月に取得予定で、取得後に醸造を開始する。自家製ビールの提供はその1カ月後から可能になる。
中村さん夫妻は、昨年から町内南町の美桑が丘でビールの原料となるホップを栽培。今年から町内上名寄の農家でも栽培してもらっており、自家製ビールの醸造に使う。
本格オープンは自家製ビールができてからになるが、改装中の店舗で試験的に営業。全国から選んだビール6種類を提供する。ノンアルコールのドリンク、水餃子などビールに合うつまみ、スイーツも用意。「本格オープンに向けて、アドバイスをいただきながら、より良い店にしていきたい」と話す。
営業時間は午後5時から午後11時まで。定休日は月曜日を予定するが、プレオープン中は不定期で休む場合もある。
事業資金には金融機関の融資に加え、下川町や北海道の補助金の採択を受け活用する。
隆史さんは醸造、紀久美さんは店長を担当。隆史さんは「できるだけ地元産、道内産にこだわったビール、笑顔になれるビールを作りたい」。紀久美さんは「楽しく飲んで食べてもらえる、居心地の良い場所を心がけながら、料理、酒の提供を頑張りたい」と語る。
屋号「ビアスタンドエール」は「夢の実現に向けて町民の皆さんからいただいているYell(エール)に対する感謝と、日々頑張っている皆さんにYellを込めた一杯を提供したい」という思いから名付けられた。
問い合わせは合同会社しもかわ森のブルワリー(電話01655⓺7155)へ。

クラフトビール店「ビアスタンドエール」をプレオープンさせる中村さん夫妻(カウンターにて)