【名寄】
名寄市立総合病院外来看護科(循環器内科)看護係長の宮腰七蘭(ななか)さんが、第22回北海道病院学会の一般演題で発表し、優秀演題(11題)に選出された。ICT(情報通信技術)による介護側との情報共有を通じ、外来看護師が主導して心不全患者を早期受診につなげ、心不全の増悪を未然に防止できた事例などを発表したもの。増加の一途をたどる心不全患者の治療における新たな可能性を示す発表内容で、病院関係者を喜ばせている。
同学会は北海道病院協会主催で、毎年1回開催。医師、看護、リハビリなど幅広い分野の症例が発表されるもの。本年度の学会は7月17日に札幌市内のホテルで開催。「デジタル技術を活用した医療の変革~DXは地域医療をどう変えるか~」をメインテーマに、一般演題133題が発表され、このうち11題が優秀演題に選ばれた。
宮腰さんは「外来看護師が行う心不全増悪早期発見の取り組み~ICTを活用した介護との情報共有と連携~」と題し、セルフチェックが困難な高齢者などの心不全患者を対象に、ICTを活用した地域の介護者との連携による取り組みについて発表。
循環器内科では心不全の増悪早期発見につなげるため、早期受診を判断する目安として、患者の受診体重を設定しているとともに、今年1月からは地域のケアマネジャー、訪問看護師、ヘルパーなどと連携し、ICTを活用した体重変化などをチェックする取り組みを推進している。
同院によると、現在、循環器内科において心不全で受診目標体重を設定している患者は約150人(市内外を含め)いるとのこと。このうち心不全により受診目標体重を設定し、ICT連携している患者は名寄市内の22人(24日現在)という。
学会では今年1月から3月までの間のICTによる情報共有を通じ、心不全患者を早期の外来受診につなげ、心不全の増悪を未然に防止できた事例などを紹介した。
この期間中、ICTを用いて介護側からの情報提供を基に受診調整を行なった事例は5件(5人)あり、このうち4人は外来受診により薬の調整などを行い、心不全の増悪を未然に防ぐことができたという。
5人のうち1人は脈が急に遅くなる、別の病気が発症していることを発見。緊急のカテーテル手術を行い、大事に至らなかったという、受診調整が奏功した事例となった。
同院の酒井博司副院長(循環器内科)は「もしも受診調整せず、定期に受診していた場合、心不全は増悪していた可能性がある」と指摘。心不全の悪化に伴う体重変動を事前に察知し、早期受診につなげる有効性を強調する。
同院によると、心不全は増悪するたびに心臓の働きは落ちていくことから、日ごろの自己管理も併せながら、どれだけ悪化させないか、そして、悪くなる手前で察知し介入できるかが重要という。
優秀演題への選出に、酒井副院長は「ICTの活用や、医療と介護の連携により、心不全の増悪は食い止めることができるという可能性を、今回の発表で示してくれた。また、情報を基に、早期受診を判断する看護師の役割の大きさや有効性を示してくれたことなどが評価されたものと思う」と語る。
外来スタッフチームを代表し、札幌で発表した宮腰さんは「医療と介護の連携による取り組みが評価いただけたことがうれしい。ITCはなくてはならないツールで、患者さんの病気の進行をいかに食い止めるかが、今後、外来看護師に求められることだと思うので、アンテナを張って取り組んでいきたいです」と喜びを語る。
