道北の馬用カンジキ文化

 2022年1月当時から1年半前、下川町内で馬用のカンジキをいただいた。馬のワラジは時々、耳にするが、カンジキは全国的に希少で、聞いたことはなかった。雪国、特に極寒・豪雪の道北ならではの文化ではないか。
 いろいろな分野の方から「馬用カンジキ」の情報を集めたが、記録が詳細に残されている文献は見つからず、大まかな内容のものがいくつかあった。新雪や春の堅雪のときに使われたようだ。雪を踏みしめ、道を作ったという話も聞く。
 前足用と後足用があって、前足用は力がかかるため滑らない工夫、後ろ足用は埋まらないような工夫があったとか、後足のみ使ったとか、人によって使い方は違うようだ。
 ワラだと、すぐに摩耗して使えなくなってしまうので、考えた末、蹄(ひづめ)に触れる部分を鉄にしたそう。蹄鉄のように、馬によって大きさを変えたとも聞いている。
 在来種(ドサンコ)である愛馬ハナは、日ごろ、蹄鉄を着けずに舗装道路を走行。雪のない時期はそれで良いのだが、冬の凍結路面は滑るため走行できない。カンジキが深い雪の上の移動だけでなく、滑り止めにもなれば、冬の活動幅が広がりそうだ。
 筆者がいただいた、馬カンジキの底面は、ロープを巻き付けた直径24㌢ほどの鉄製の輪の中央に、直径8㌢ほどの鉄製の輪があり、外側と中央の輪を6本の鎖でつないでいる。上部には馬の足に結び付ける紐がある。
 昨冬、試しにハナの四つの足にそれぞれ着けてみたが、雪の上を歩いていると、型が緩くて脚から外れた。やはり、ばん馬用でドサンコには大きいのだろう。
 名寄市内の北国博物館にも「馬用カンジキ」が展示されている。外側の輪を皮で巻き付けたものや、足に結ぶものが紐ではなく、布ベルトになっているものもあり、使いやすそうだ。
 時とともに使いやすいもの、長持ちするものが作られ、身近なもので補修しながら使っていたことがうかがえる。

<今回は名寄新聞の2022年1月6日付掲載記事を基に再構成しました>