キクヱさん働く愛馬と涙の別れ

筆者も運動後は愛馬の全身と蹄の
手入れを欠かせない

  今回は名寄市在住の髙橋キクヱさん(当時・86歳)から寄せられた思い出「嫁ぎ先で愛馬の別れ」を紹介させていただきます。
 ―以下、髙橋さんの思い出から抜粋。
 春先、美深ではどこの家でも、年中たく燃料の丸太を、山から家まで馬で運んでいました。
 嫁ぎ先にいた赤い鹿毛の馬はとてもよく働き、毎日、バチに大きな丸太を山ほど積んで運んでいました。家に着いた馬の背中から鞍を下ろすと、馬は汗と湯気で体全体をびっしょりにし、馬屋に入れられていました。
 私はスキわらを手に馬へ「ご苦労さん、ありがとうね」と言いながら全身をふいてやりました。ふき終わると馬は鼻をならしながら、うれしそうに私を見ていました。
 そろそろまき山も終わる、ある日のことでした。馬が夢で「これ以上働けない。人間でいえば肺炎と同じ」と私に言うのです。朝起きて主人に「馬に無理させないで、体が悪いのだって。一度診察して」と話しました。
 まき山も終わって馬の診察を受けたところ「よくこんな体で、これだけの丸太を運んで来たね」と言われ、私は涙がとまらなく泣き、毎日スキわらで体をふき、えん麦やニンジンを与えました。
 ある日朝早く馬屋を見に行くと、横になっているままの姿を見て、何とも言えない愛馬の別れでした。馬へも「家族として思いやる心」の大切さがあってほしいと思います。
 ― 馬への愛情が伝わる髙橋さんの思い出でした。

<今回は2016年2月28日付名寄新聞掲載の記事を基に再構成しました>

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