名寄市の町内会②
町内会は自主的な組織であるので、事業費や活動費などは、主に町内会費で賄うが、運営費や活動費の一部を交付金として支給するなど行政も一定の支援をしている。2023(令和5)年度の町内会に対する市からの主な助成は、表1の通り。
このうち、地域連絡協議会等活動交付金については、23年度まで、各小学校区単位の町内会で構成する地域連絡協議会に対して運営費と活動費の一部を交付金として交付していたが、構成する町内会の数や活動に大きな差があることから制度を見直した。
本年度は、新たに「名寄市地域連携事業補助金」を創設して、複数の町内会や、町内会と各団体が連携する事業などに対して、10万円を上限に助成している。
具体的には、大町区町内会の名寄市立大学軽音楽部と連携しての「街角コンサート」の開催。名寄市立大学の学生も参加している大橋区町内会と大橋商工団地町内会の合同ラジオ体操などに助成している。
名寄市町内会連合会(猿谷繁明会長)では、1975(昭和50)年の設立(当初は「名寄市町内会・部落会連絡協議会」)以降、各町内会との連絡調整や住民福祉の向上などを目的に、町内会長と行政の懇談会、まちづくり懇談会、町内会長交流研修会、町内会ネットワーク研修会、町内会活動実践者研修会、先進地研修、親睦パークゴルフ大会など、多くの事業を実施している。
各町内会を取り巻く状況は、過疎化や少子高齢化などの進行により、会員不足、役員の成り手不足、事業の縮小など多くの課題を抱えている。
単位町内会の会長で構成する町内会連合会の猿谷会長に、連合会の活動や今後の課題などについて話しを聞いた。
猿谷さんは、2010(平成22)年度に6区の会長となり、現在まで15年務めている。同年から連合会の理事、副会長を23(令和5)年度まで務め、24(令和6)年度に会長に就任した。
連合会が今年で50周年を迎えることについて、「歴代の会長や役員の皆様の努力のおかげ」と、感謝の念を伝える。また、50年の足跡などについては、現在「資料収集している」と話す。
連合会の活動については、どの町内会も高齢化しており課題も多いが、「若い町内会長などから『連合会の活動を楽しみにしている』などの話を聞くととてもうれしい」と話し、「町内会も連合会の活動も楽しさが原点」と語る。
また、「年齢に関係なく、健康で楽しくボランティア活動などをすることは、喜びも湧いてくる。今後も、町内会活動の楽しさや喜びなどを伝えたていきたい」と述べる。
事業については、まちづくり懇談会を名寄地区、風連地区、智恵文地区の3箇所に集約。町内会長の先進地研修についても、多くの人が参加できるよう、行政課題をテーマに近隣で日帰りできるところに検討している。町内会には、スポーツ、文化など、趣味・特技で多彩な才能を持っている人が多くいるので、これらの人と協力して「町内会を元気で楽しいところにしたい」と笑顔で語った。
智恵文地区の取り組み
智恵文地区は、1954(昭和29)年に当時の智恵文村が名寄町と合併し、合併翌年の55(昭和30)年には23の行政区があった。智恵文地区の人口は、合併時の54(昭和29)年は4360人であったが、2024(令和6)年12月末時点では376人まで減少している。
人口減少が続く中、行政区・町内会の再編・統合を経て10の町内会となり、18(平成30)年に智恵文地区の全町内会が合併して「智恵文町内会」一つとなった。智恵文町内会の下に各ブロック(旧町内会)を9箇所(18年当時は10箇所)設置して、従来の町内会活動である環境整備、支え合い、交流事業などを実施している。
現在、智恵文町内会の会長は、松下守さん(南ブロック)が務めている。智恵文地区では、役員の任期を原則2年(一部のブロックは1年)として負担軽減を図っており、松下さんも、合併前の智恵文南町内会の会長を何度か務め、合併後の町内会長に選出された。
松下さんは、「7年前の合併の際は、2年前から各町内会で協議を始めた。少子高齢化や人口減により、さまざまな活動の担い手不足などが深刻化していたので、合併して一つの町内会になった。合併により、各地区のブロック長(旧町内会長)の負担が軽減されたと思う」と話す。
智恵文町内会の会費は1世帯当たり年間1万円で、ネットワーク事業、ふるさと祭り、まちづくり懇談会などの他、独自の事業として除雪サービス事業、町内会だよりの発行などを実施している。敬老会や健康まつりなどの行事は、町内会も参画して智恵文地域連絡協議会が主催している。松下会長は、「人口減少が続いているが、新規就農者などもあり、現在実施している各事業を各ブロックで協力しながら、今後も継続していきたい」と話し、行政に対しては「『有害鳥獣対策をしっかり実施してほしい』と要望している」と語った。



