人口減少社会における町内会・自治会のあり方6

美深町の自治会
 美深町の人口推移は表1の通りで、ピークの1960(昭和35)年には1万4046人(国勢調査)であったが、直近の2024(令和6)年の9月末人口は3718人(住民基本台帳)とピークの26・5%となっている。
 美深町の町内会・部落会の駐在吏員制度は、1956(昭和31)年に行政区に改め、各区に行政区長を配置。市街地7区、集落24区に区域を分割して行政区を形成している。(美深町史)行政区内に自治会が組織され、89(平成元)年に「美深町自治会に関する条例」が制定され、翌90(平成2)年2月に自治会長で構成する「美深町自治会連合会」が設立されている。
設立当初は、市街地は「町内会」と呼称していたが、その後「自治会」に統一し、現在は17の自治会で構成している。(自治会の内訳は表2の通り)
 連合会の主な事業として、連合会だより「みんなのまちづくり」の発行、自治会長交流会・研修会の実施、連合会意見交換会、女性部視察研修、春・秋クリーン作成への参加奨励などを実施。また、各自治会が実施するイベントなどへも3万円を上限に助成している。
自治会への住民の加入率はほぼ100%と高く、自治会費は市街地で1カ月300円、600円など。農村地区では年額7000円、1万円などさまざまで、障害者や高齢者世帯に対して減免している自治会もある。
 美深町では、敬老会は自治会主催で開催しており、街路灯についても、電気料の一部(15%)を自治会が負担している。町では、残り85%を町が負担し、修繕費は全額負担している。町の自治会等に対する主な支援は表3の通り。
 また、各自治会には、行政主体で自主防災組織が設置されているが、20年近くが経過した現在、災害時の対応など新たな課題も生じている。
 自治会連合会の本平武士会長に話を聞いた。本平さんは、第4自治会の副会長を経て10(平成22)年から会長(連合会副会長)、12年(平成24)年から連合会の会長を務め、現在に至っている。連合会の事業について、「発足当初は、連合会の独自事業や各自治会の特色ある事業などもあった。現在は、行政の補完や連絡調整が中心」と話し、「広報の配布や、週1回の役場からの連絡文書、回覧板などの行政事務などが多い」と語る。
 また、夏まつりの「行灯」について、「以前は多くの自治会が参加していたが、現在は6自治会の参加のみで寂しい」と話す。自治会を取り巻く課題については、「以前は60代で働いている人は少なかったが、現在は多くの60代が働いている。役員も高齢化しており、今後、再編・合併が進むだろう」と課題を挙げる。
 本平会長が居住する第4自治会は、25班・169世帯で構成する。自治会費は、月額210円(平均値)で比較的安い。また、班長の任期は3カ月で、多くの人が班長になってもらえるよう、任期を短くしている。
 主な行事は、環境パトロール、春・秋のクリーン作戦、ふるさと夏まつり行灯行列への参加、ふれあい交流会、町民運動会への参加、敬老会などを実施している。行灯行列は、参加自治会が減少する中で、現在も続けている。
 次に、新生自治会の特色ある取り組みを紹介する。同自治会は、美深駅の東側に位置し270世帯で構成。旧天塩川木材の跡地に住宅が立ち並び、比較的若い世代も居住している。
 人口減少やコロナ禍による事業活動が縮小する中、多くの住民の行事等への参加を願い、22(令和4)年度から「自治会活動活性化・社会参加活動ポイント事業」をスタートさせた。自治会の行事や町のイベントなどに参加するとポイントが付与され、ポイントを貯めると、町内で使用できる商品券が贈られる―との内容になっている。具体的には、自治会総会、行灯行列、町民運動会、新生まつり、まちづくり懇談会、自治会新年会などに参加すると10点がもらえ、クリーン作戦(春・秋)、健診・特定健診などは8点、各種スポーツ大会参加(3~6)などとなっており、1年間のポイントが50点で3000円分の商品券、40点で2000円、30点で1500円、20点で1000円、10点で500円の商品券が、それぞれ贈られる。
予算は、コロナ禍で事業費が縮小したこともあり、自治会活動活性化基金を設置して150万円積み立て、これを充当している。
 事業開始後3年が経過。同自治会の阿部憲一会長は、「コロナ禍でもあり、『行事に参加してほしい』との思いからポイント事業を始めたが、参加者はそれほど増えていない」と語る。また、今年度から、ひまわり会(子ども会)行事への支援も実施している。阿部会長は、「課題はあるが、今後もポイント事業を継続していきたい」と話している。
 自治会を担当する町企画商工観光課企画グループ副主幹兼企画係長の石川孝弘さんは、自治会の現状と課題について、「幸いにも、自治会の加入率は良く、地域に当たり前のような存在になっている」と、活動を評価する一方、「今後も、時代に即した自治会活動が求められる。デジタル化をはじめ、多世代に受け入れられ、かつ必要とされる組織が大事」と話す。
 また、一番の課題は、「少子高齢化が強烈に進んでいるので、役員の成り手が少なく、必然的に長く続ける方が多く、役員の年齢構成は高めになっている。次の世代につなげていくため、新たな層にも自治会運営に参画してもらうことが必要と思う」と語っている。