今回も2023年のお話。子馬のあーちゃんは1年後に自立している。
筆者の友人、下川町一の橋に移住した佐野美紀さんが飼う、ドサンコの「ゆう」(5歳メス・佐目毛、道内芽室町出身)は、5月14日に月毛のメス馬を出産。一の橋に十分な草が生えるまで、町内三の橋の及川牧場に放牧されていた。
出産から数日が過ぎた頃、牧場内で、ゆうとあーちゃんの移動が必要となり、筆者も最初だけ移動を手伝った。
生まれたての馬の移動は、ひき馬ではできない。母馬をひき馬で付いて来させるのがコツだ。
母馬は、はしゃぎまわる子馬に意識を向け、子馬を呼び戻そうとするかもしれないが、ひき馬をする人が、母馬としっかりコミュニケーションをとって信頼関係を築き、自分に付いて来させることで、子馬も後からちゃんと付いてくる。
母馬は出産直後、子馬に人が近づかないよう間に割って入るかもしれないが、コミュニケーションをとるうちに、子馬の相手を委ねるようにもなる。
ゆうとあーちゃんも、その通りの結果となった。
美紀さんは「今年の子馬は昨年の子馬ラミレス(オス)と違い、メスで性格が全く違う。母親にべったり付かず、好奇心のままにあちこち、よく走る。身体能力が高い感じだ。及川牧場にいる間に放牧場と馬房を行き来し、移動に慣れてもらった」と言う。
「尻を向けて蹴ろうとするなど、子馬への接し方が課題」と述べ、一歩ずつ克服中。
馬を飼っている人に子馬の無口頭絡(むくち・とうらく)を付けてもらい、「子馬の首にロープの輪をかけると、子馬は暴れて首が絞まる。動けなくなったところで無口を付ける。短時間で健康に影響はないとのこと。付けた無口に、リードロープを付けて木につないだ。子馬は自由に動けないまま、何時間かそのままにしておくよう教えてもらった。この世では何もかも自由にできるわけではないことを覚えてもらうそうだ」と話す。
5月31日、ゆうは、あーちゃんと共に一の橋に戻ってきた。あーちゃんは生後15日で、口・目の周りが黒くなった。
美紀さんは「一の橋に移ってからは、とにかく食べる草が切れないよう、放牧場を移っていくことに専念している。なるべく多くの場所で草を食べてもらい、野生動物が人里に近づき過ぎるのを少しでも抑止できたらと思う」と語る。
<2023年7月4日付名寄新聞掲載の記事を基に再構成しました>