地域とともに歩む名寄市立大学10

10 終わりに

日本の18歳人口は、2023年現在112万人で、その後、緩やかな減少が続き、32年に100万人を割り、98万人と予測されている。また、22年の出生数は約77万人であるので、40年には80万人を割ってしまう。
こうした状況下、大学入学志願者が総定員を下回る「大学全入時代」を迎えている。
日本私立学校振興・共済事業団は、23年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」を公表した。
これによると、集計した600校のうち、実に320校(53.3%)の私立大学で定員割れが生じており、調査開始以降、はじめて半数を超え過去最多となった。特に、地方の大学で顕著になっており、私立大学に限らず、国立・公立大学についても厳しい状況であることに変わりない。
少子化の問題とともに、地域的な課題として旭川市立大学が開学し、地域間競争が激化している。特に、看護学科と社会福祉学科は、同大学にも設置されていることから競争が激しく、また、交通の便など地理的な面からも、不利であることは否めない。
名寄市では、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の5本の柱の中に「小さくてもきらり光る、ケアの未来をひらく大学があるまち」を掲げている。大学を地方創生に掲げている自治体は多く、その取り組みはさまざまである。大学は、名寄市のまちづくりに大きな影響を与えているので、具体的な取り組みを期待したい。
名寄商工会議所の藤田健慈会頭は、今後の大学のあり方について、「周辺を含めて名寄市が抱える様々な課題を研究テーマにして、教員、学生、市民が協働で新しい解決策を見出してほしい」と期待を込め、そのためには、「教員と市民との交流がもっと必要で、市民の側も、大学をもっと頼ってほしい。利用してほしい」と話している。
これまで、過去9回にわたって、大学設立の経過、地域貢献、まちづくりへの影響、消費・経済効果、大学の収支、法人化の有無、大学院の設置構想など、名寄市に大学があることのさまざまな効果などについて述べてきた。
名寄市立大学は、少人数教育、連携教育、学科横断教育、高い就職率と国家試験合格率、市民と学生の距離の近さ、街なか全体がキャンパスなどをPRして学生を確保してきた。
しかしながら、18歳人口の減少という全国的な課題は避けて通れない。また、喫緊の課題として、社会福祉学科と社会保育学科の志願倍率低下が挙げられる。
今後、10年後、20年後も、学生から選ばれる大学となるには、これらの取り組みを充実・強化させていくとともに、さらに、魅力ある大学にしていかなければならない。
今後も引き続き、市民とともに歩む名寄市立大学として、新たな魅力ある大学づくりをめざしてほしい。
(第2部終わり)