9 加藤剛士市長(設置者)にインタビュー
―名寄女子短期大学の設置から64年、名寄市立大学の開学後18年が経過しました。全国的な少子化による18歳人口の減少など、大学を取り巻く情勢は厳しさを増しています。設置者として、名寄市立大学の課題や今後の目指す方向性などについてお聞かせください。
加藤市長 2023年現在の18歳人口は、約112万人で今後も減少が続き、10年後は100万人を切ることが予想されます。大学は、学生が確保できないと存続できません。学問としての役割を高めつつ、いかにして学生に選ばれる大学になっていくかが、大学の存亡にかかわってきます。そういう面では、非常に危機感を持っています。
名寄市立大学は、学術的な面では国家資格を取得して、医療・福祉などの分野における専門職としての人材を輩出することですが、最も大きな特徴として、人口2万5千人から6千人の自治体で公立大学を持っているということで、これは、全国的に見ても類をみない。若い学生にしてみると、ある意味、きらびやかな建物や遊ぶ場所があるところが良いと思われるかもしれませんが、一方で、これだけ小さな自治体でしか味わえない大学生活もあると思います。例えば、地域住民との交流の深さだったり、名寄でしか味わえない美しい自然であったり、色々な体験がある。こうしたことを、今後も磨いていくことは、とても大事なことだと思っています。
大学院設置について
今は、大学そのものを、周囲の皆さんでどうしていくかを考えていく時期に来ていると思っています。場合によっては、学科や定員とかの大胆な見直しを、時代に即した形でやっていく。これからの大学を持続可能な形にしていく。そういった意味でも、より機動性と柔軟性を持った大学経営をしていく観点からも、法人化の設置を検討することは、今、まさに急務であると思っています。そうしたことで、直営ではできない、人材確保などさまざまな動きも可能になってくると思います。こうしたことを、ぜひ検討していきたいと思っています。
大学院の設置については、大学をこれからも魅力あるものにしていくため、知の拠点としての高みを目指していくためにも絶対に必要だと思っています。大学の質をより高めていく、さらには、大学があることそのものが地域振興につながっていく。地域としても、大学をもっと、知の拠点として、地域の課題に立ち向かっていく教育や研究の力を高めてほしいという願いもあります。大学側も、大学院の設置に向けて努力してほしいし、市としても支援をしていきたいと考えています。現在、若干ブレーキがかかっていますが、これからも、大学が生き残っていくためには、大学院の設置は必要なことと考えています。
大きな分岐点迎える
名寄市に大学を設置・存続して、ここまで素晴らしい大学になったのは、ある意味、奇跡的なことであったとも言えます。昔の公立大学は、都道府県や政令指定都市などにしか認められていませんでした。その後、例えば、釧路公立大学の設立の際は、地域にどうしても高等教育機関が必要との構想を立て、文科省や総務省との折衝は相当のプレッシャーがあったにもかかわらず、地域の強い危機感から風穴を開けることができ、地方都市でも公立大学の設置が実現しました。
その後、公立短大から公立4大化の全国的な流れに、名寄市もうまく乗れたと思っています。そうした色々な偶然や時の政治状況に恵まれて現在の大学があるといえます。4大化の際は、市長ではありませんでしたが、市民を巻き込んで、大学をどうしていくのか、マチをどうしていくのかという議論が、賛成・反対含めて紆余曲折ありましたが、大きな変革の時に市民の皆さんに色々なエネルギーをいただいたことで、今の大学があると思っています。
この間、4大になって約18年、今、もう一度時代が変わってきている中で、大きな分岐点、大きな見直しをしていく時期になっていると思います。学長が変わることになりましたが、この機会に、今置かれている状況の中で、大学の運営を、法人化や大学院の設置など大胆に見直していく。こうした議論を市民の皆さんに広く知っていただき、大学をどうしていくかの議論を深めていく時期にきているのではないかと思っています。
学生は名寄の宝
名寄市立大学の特色は、学生にとって、都会と違う市民との距離の近さにあります。先日、農家の有償ボランティアの認定証交付式がありました。農家の皆さんは、とても助かっており、学生にとっても、良い経験・勉強になったと思います。
今後は、これまで以上に、市民と学生が接する機会をもっともっと増やしていくことが必要だと思っています。これが、更なる魅力につながると思います。学生の多くは、市外から名寄に来て青春を謳歌しています。
学生は名寄の宝です。市民の皆さんに、ぜひお願いしたいのは、学生に対して温かい心で接してほしい。地域で学生を育ていくという気持ちを持ってほしいと思っています。
ありがとうございました。