第61回道北文化集会短歌部会が9月29日午前10時から名寄市民文化センターで開催された。北海道新聞の日曜文芸欄の短歌の選者をしている柳澤美晴さんを講師として招き、講演及び歌会が行われた。
講師の柳澤さんは第19回歌壇賞を受賞し、その後も数々の賞を受賞している。
「歌からにじみ出るもの~私性をめぐって」と題した講演では、柳澤さんの生い立ちの説明から始まり、柳澤さんの家族を詠んだ作品の紹介に加え、第1歌集の「一匙の海」からもたくさんの作品が紹介された。
色々な歌の紹介の中で、良い歌とは作者の独自性があり人格や背景がくっきりと分かるものと説かれた。スクリーンに一首ずつ短歌が大きく映され、それを見ながらのテーマの解説は話しだけよりも分かりやすく、参加者も熱心にスクリーンに見入っていた。
講演の中では、参加者がクイズ形式で短歌の言葉を考えてみるというくだりもあり、学びの多い45分の講演が終了した。現在、若き短歌作家として活躍中の柳澤さんから、生の言葉で短歌への思いを聞くことができ、参加者は新しい発見の多い有意義な時間を過ごした。
その後、歌会が始まった。事前に歌会参加者から提出してもらっていた短歌を一首ずつ読み上げて、皆で意見や感想を述べ合い、柳澤さんに講評を述べてもらうという形で行われた。
今回24人の方から参加申し込みがあり、当日の参加者は18人で、見学者が1人、6人は欠席で短歌のみの参加となった。
参加者が思いを込めて創った短歌という31文字の作品一首一首に参加者が感想や意見を言い合う。短歌仲間と共にじっくり一首一首を味わえるというのが歌会の醍醐味だろう。参加者からの感想や柳澤さんの的確な講評に、あらためて歌の深さや良さに気付かされることも多くある。一首を読み上げたのち皆で意見や感想を述べ合うときはその一首が主役となり輝く時間なのだ。
午前中に1時間と、午後からの1時間で歌会が終了。最後に参加者同士の互選で選ばれた5人と柳澤さんが選んだ講師選の5人へ、表彰状と記念品が贈呈された。加え、講師選の5人には、柳澤さんより歌集「一匙の海」が1冊ずつ贈呈された。
出席者18人は和寒町、士別市、名寄市、美深町、中川町からの短歌愛好者。和やかな雰囲気の中で、たくさんの事を学び、笑顔で閉会となった。
短歌は古代より引き継がれている日本の伝統文化を代表するもの。長い時を経て、形を変えて時代に合う新しい表現方法も取り入れられてきた。日常の些細なことや発見をわずか31文字の歌で表すとそのことが光り輝き大切なものに変わるから不思議だ。
名寄新墾(にいはり)短歌会は毎月第1月曜日午前10時から「よろーな」で例会活動を行っている。興味のある方はいつでものぞきに来てほしい―とのこと。
(通信員・金子)