開拓期から現代へレールつなぐ 士別~名寄間 鉄道開業120年

減便、駅廃止、単独維持困難 宗谷本線の特急は旭川止まりも

列車脱線など、事故やトラブルが相次いだJR北海道だが、さらに経営の厳しさが拍車をかけている。
1987年(昭和62年)4月1日、国鉄が分割民営化され、JRが発足した。JR各社とも当初は全株式を日本鉄道建設公団(2003年10月1日、鉄道建設・運輸施設整備支援機構に改組)が所有していたが、JR東日本、JR東海、JR西日本では同公団所有の株式が全て売却され、完全民営化した。
一方、「三島会社」と呼ばれるJR北海道、JR四国、JR九州には、人口や利用客の少なさから、収益が伸び悩むことを想定し、「経営安定基金」が設けられ、その運用益によって経営を支えるというスキームだった。なお、JR九州は16年(平成28年)4月1日に完全民営化したため、経営安定基金は廃止されている。JR北海道、JR四国は現在も全株式を鉄道・運輸機構が所有している。
しかし、金利が低下し、運用益も減少しており、このスキームは破綻していることから、国鉄分割民営化は失敗だったという指摘も多く出ている。また、国鉄分割民営化は労働組合の弱体化を狙ったともいわれる。
JR北海道では16年3月26日ダイヤ改正以降、全道各路線で利用客減少や車両老朽化を理由に、普通列車が減便されるとともに、利用が極端に少ない駅も廃止され、現在に至っている。宗谷本線も16年3月26日ダイヤ改正で名寄~稚内間の普通列車が減便された。21年(令和3年)3月13日ダイヤ改正では南比布、北比布、東六線、北剣淵、下士別、北星、南美深、紋穂内、豊清水、安牛、上幌延、徳満の12駅が廃止された(豊清水は信号場として存続)。22年(令和4年)3月12日ダイヤ改正では中川町内の歌内駅が廃止。24年(令和6年)3月16日ダイヤ改正では美深町内の初野駅と恩根内駅が廃止されることになっている。
さらに16年11月18日、「JR単独では維持困難な線区」が発表され、宗谷本線の名寄~稚内間をはじめ、輸送密度2千人/日未満の全道11線区が対象となった。以降、沿線市町村では鉄道の存廃に揺さぶられる事態が続いており、将来的な廃止を危惧する声もある。宗谷本線では、宗谷本線活性化推進協議会が中心となり、JR北海道に存続を訴えている。
17年(平成29年)3月4日ダイヤ改正では、車両の老朽化を理由に、特急「サロベツ」のキハ183系が運用を離脱した。特急は従来、3往復とも札幌~稚内間で運行してきたが、キハ261系の編成数の少なさが影響し、同日のダイヤ改正以降、札幌~稚内間の「宗谷」1往復、旭川~稚内間の「サロベツ」2往復に再編された。札幌直通は1往復だけとなり、残る2往復は旭川止まりとなったことから、旭川駅で乗り継ぎとなって不便という声も上がっていた。
名寄駅でも、16年3月31日にツインクルプラザ(旅行センター)が閉店、同年12月20日にはキヨスク(売店)が閉店し、駅舎内が寂しくなった。
(続く)