愛馬ハナとの馬そりは、主に手作業で除雪をしながら、環状のコースを作って行っている。
ハナは「速歩(はやあし)」と声を掛けるか、手綱で軽く合図すると加速。加速中、乗り手の重心を傾けながらそりに遠心力を加え、大きく回らないと内側の雪に突っ込んでしまう。馬がきちんと回るためには手綱での操作も必要なため、馬の進行方向と自分の重心の操作を同時に行う。
筆者が一人で乗るときは、加速中も立ち乗りで、体のバランスを保つことも必要になる。手綱を操るため手ではバランスが取れず、加速して滑るそりはスノーボードのような感じかもしれない。
下りの急カーブで、一気に外側へ回った瞬間、急に内側へと引き戻されるところがあり、外へと飛ばされないよう耐えた瞬間に、内側へ戻る力にも耐えねばならず、よろけそうになる。
たまに、そりの上にとどまれず、外へ出てしまうこともあるが、遠心力の影響で、勢いよく外側へ飛ばされてしまう。しかし、ハナは立ち止まり、筆者が再び乗るのを待っていてくれる。
近辺の敷地もそりで移動して、曲がったりバックしたり、方向転換をしながら、操作の練習も楽しんでいる。
そろそろ春を感じるようになり、馬そりのシーズンも終わりそう。
<今回は名寄新聞の2021年3月6日付掲載記事を基に再構成しました>
<再掲載>愛馬ハナに乗って上興部1泊2日の旅
筆者の飼う愛馬ハナとの旅は、2019年には下川町外へ。その年の9月17、18日はハナに乗って下川町内一の橋から天北峠を越え、西興部村上興部までを往復した。地元自転車サークル「リンリン倶楽部」の合宿に参加し、自転車メンバー4人と一緒に出掛けた。宿泊を伴う馬旅は初挑戦となった。
この頃、ハナと同種であるドサンコの日本縦断旅をつづった絵本「馬のゴン太の旅日記」を読んで刺激を受け、仕事と両立しながらできる規模で、ハナに乗っての北海道旅、手始めに近隣市町村旅を決意した。
上興部までの旅は、その馬旅訓練の第一歩といえる。
上川管内下川町と網走管内西興部村を結ぶ天北峠は、長い坂道が続く。登りは馬が圧倒的に速い。下りは足腰の負担を考慮し、スピードを抑えながら走る馬に対し、車輪を転がしながら下る自転車の方が速くなる。自転車が下りで追い付き、追い越す形になる。ハナも長い上り坂に、汗びっしょりである。
上興部に入ると、道の駅「花夢」や鉄道資料館(旧上興部駅)にも立ち寄った後、宿泊場所である旧校舎を利用したゲストハウス「GA.KOPPER」へ。到着すると、ハナが来ることを知った、たくさんの地元の子どもと保護者に出迎えていただいた。
グラウンドで、そのままハナへの餌あげや乗馬体験を実施し、馬装を外して裏庭の木にハナをつないでから、宿へチェックインした。
筆者の食事、入浴、就寝中は、ハナを木につなぎ、時間の合間に引馬で草を食べさせ、つないでいる間の餌に、周りの草を刈り取って与えた。寝ている間もハナが安心するよう、午前1時、3時、5時に起きて確認し、6時半には引き馬で草を食べさせた。
馬旅をする時、放牧できない場所では、外でつながなければいけない場面が多々あるだろう。その訓練のため、あえてこの手法を実践。「つながれても、飼い主がちゃんとそばにいてくれている。迎えに来てくれるから安心だ」とハナに感じてもらい、旅に必要な絆を、一層深めることができたらと思う。ただしつないでしまうとクマの存在が心配だが…。
ゲストハウスのご一家、宿泊している旅の方、西興部の方々と馬を通じて交流を深め、馬のある暮らしの可能性を共有する機会にもなり、充実した2日間になった。リンリン倶楽部の皆さんにも、感謝の気持ちでいっぱい。
翌日の帰路では2日連続の峠越えに、筆者もハナも疲れ始めたが、無事一の橋まで戻った。
<名寄新聞の2019年10月7日付掲載記事を基に再構成>