外国人傷病者と意思疎通図る 名寄消防署「救急ボイストラ」訓練 より質の高い救急活動提供へ

【名寄】

救急ボイストラを活用し訓練に当たる隊員

名寄消防署(谷口直寿署長)による救急ボイストラ(多言語音声翻訳アプリ)を活用した活動訓練が、19、20の両日、同署講堂で行われ、日本語が通じない傷病者との意思疎通を図る方法を確認し、質の高い現場活動の提供を目指して技量を高めた。
ボイストラは、総務省が所轄する国立研究開発法人情報通信研究機構開発のスマートフォン用の多言語音声翻訳アプリ。スマートフォンに向かって日本語で話すと、他言語に置き換えられた音声が流れ、相手と意思疎通を図ることができる。
全国の消防本部では、救急活動時に使用する会話を定型文として使用できるなど、救急隊用に研究開発された「救急ボイストラ」の普及が進み、名寄消防署も2018年に導入。現在、名寄救急、風連救急の救急隊長スマートフォン3台にインストールして活用しているが、実際の救急現場で救急ボイストラを活用した現場活動経験のある隊員が少ない(過去5年間で2例)のが実情という。
 新型コロナ感染症による規制が緩和され、外国人旅行者数も回復傾向にある他、名寄地域も外国人労働者が年々、増加している現状を踏まえると、外国人を対象とした救急出動件数の増加が予想される。
今訓練では、外国人傷病者とのコミュニケーションを図り、迅速な医療機関への搬送へつなげることを目的に実施。市総合政策部交流推進課の李珮琪(リ・ペイチ)さん、外国語指導助手のスピヴァク・ディーナさん、リー・アレックスさんの3人が傷病者役として協力した。
訓練には2日間で職員24人が参加。救急隊長、救急隊員、機関員の3人一組となって訓練に臨んだ。
農作業中に意識障害が発症した事例や、仕事中に胸の痛みが発症した事例などを想定し実施。隊員たちは救急ボイストラを介して、何語が通じるのか、具合が悪い体の箇所、いつから症状があるのか、通院中の病気の有無の他、血圧や心電図を測定する際の説明や、救急車で名寄市立総合病院に搬送する旨を伝えるなど、傷病者と意思疎通を図りながら救命措置、搬送に当たる様子が見られた。
終了後、傷病者、救急隊のそれぞれの立場から、訓練を通じて感じたことを発表。傷病者役を務めた3人からは「日本語は主語が不明確」「思っていることを伝えるのに時間がかかった」「常に身分証の携帯が必要だと感じた」など。
救急隊からは「思っていたよりも時間がかかる」「言葉だけでなくジェスチャーを交えて伝えればよかった」「体に触れたりする際は、その都度確認するなどの配慮が必要」「救急ボイストラの数や活動人数を増やした方が、より良い救急活動ができると感じた」などの感想が出された。