草と馬と人がつながりあって循環

 あらゆる草も資源だ。地域の人と馬、動植物がつながりあって資源の循環ができれば、暮らしはより豊かになる。その挑戦の記録を次世代に残すべく、2023年の様子をつづらせていただきたい。
 2023年も北海道和種馬ハナは筆者を乗せ、下川町内のさまざまな場所を訪れた。人々と触れ合いながら草を食べ「動力」と土壌を豊かにする「堆肥」に変えて循環させた。
 昨年は、冬を越している町内三の橋の牧場で、4月下旬から雪解け後の広い牧草地に放牧。草を食べさせてから、5月上旬にまちなか近くの美桑が丘の森林に移動。春、夏、秋と放牧場所を替えながらササを食べさせた。その合間には、さまざまな方々にハナと触れ合っていただくことを目的に、草刈りを兼ねた出前放牧を展開した。
 2023年は、美桑が丘での通年放牧の可能性を探るため、春の牧草地で放牧をあえて行わず、4月下旬から美桑が丘に電気柵を張って移動、ササを食べさせた。春の放牧範囲を広くすることで、最初の放牧場所を夏まで持たせる計画だったが、ハナの食欲は予想以上で、ササが足りなくなり、痩せ始めた。
 そこで、出前草刈り放牧を積極的に導入。触れ合いだけでなく、生えている草を食べさせることも意識した。美桑が丘で触れ合う予定がある日は美桑が丘の放牧を優先し、それ以外の日中は移動しながら草を食べさせ、行き先がない日は自宅庭で乾燥草も食べさせた。
 草刈りや触れ合い放牧の依頼を受けて、町内の班渓・南町・北町・旭町・西町の民家や団地11件、錦町商店街の店(あそべや)、共栄町のゆきみち書房、宿泊施設「結いの森」、老人ホーム「あけぼの園」、町総合福祉センターハピネス(つながるカフェ)などで放牧。認知症対応型共同生活介護事業所「グループホームふるさと」でも木につないで草を食べさせ、恒例の一の橋放牧も実施した。
 前年の2022年より場所も増え、週に1、2回の頻度で展開した。
 うちスキー場と五味温泉の道路の交差点にある武藤昭広さんの敷地は、美桑が丘に近くて往来しやすく、見晴らしもよいところで、武藤さんのご好意によって電気柵を設置したままにし、繰り返し放牧して草を食べさせてもらった。
 美桑が丘の放牧も、7月中旬から電気柵を移設し、場所を替えてササを食べさせ、10月15日まで維持して放牧。痩せ気味も解消し、ひと安心できた。
 その後、ハナは三の橋の牧場に拠点を戻し、同じ北海道和種馬のゆうちゃんと放牧して共に冬を越した。
 生えている草を循環させて馬を飼うには、それをまかなえるだけの場所が不可欠と実感。美桑が丘にも草やササはあるが、毎年継続して循環できる範囲で食べさせるには、他の場所との併用も大切と感じた。地域のさまざまな方々と連携しながら、好循環を生み出したい。
 馬の出前草刈り放牧は物々交換で対応しており、その方々のできる形でお返ししてもらっている。お金を介さず、互いのできることを提供し合うことで、暮らしをシェアし合うことにもなり、心豊かになれ楽しい。皆さんに感謝申し上げます。そしてこれからも循環の可能性を追求したい。

<今回は2023年11月7日付名寄新聞掲載の記事を基に再構成しました>

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