馬が教える動物との会話術

およその腰角の位置は写真の通り

 以前、馬とのコミュニケーション能力を育む「調馬索(ちょうばさく)運動」に触れたが、書ききれなかったため、補足したい。(以前の話はこちらをクリック)
 馬は「気持ち」を伝えることで動いてくれる。調馬索運動は「心・気持ちの表現で、動物と会話する仕方」を馬から教わることができる。
 長さ8㍍の紐「調馬索」を馬の頭絡(とうらく)につけて束ねて持ち、馬が歩き始めたら、伸ばして長くし、円を描いて歩かせ走らせる。
 頭絡とは馬の頭に装着する馬具。馬をつないでおくとき、誘導時に必要な引き手を装着するのに使う他、乗馬などの際、馬の口に装着する銜(はみ・くつわ)を適切な位置で固定させるために使う。普段は銜のついていない「無口頭絡」(むくちとうらく)を付けている。
 調馬索運動に話を戻すが、人はなるべく円の中心で動かず、馬の「腰角」(ようかく)の延長上に立つ。調馬策は引っ張られ過ぎず、たるみ過ぎず、一定のコンタクトを保つ。
 この「腰角」とは後足のちょっと手前のところ。指示をしようとすると、馬の前方に意識が行きがちだが、そうなると前方に向かう馬のエネルギーを妨げてしまう。後方から前方にエネルギーを送るイメージだ。
 馬との会話術を学ぶのは、クマやシカなど野生動物との会話術を学ぶことでもある気がしており、「調馬索運動」は、人と動物との共存の在り方のヒントにもなるのではないだろうか。

<今回は2023年2月20日付名寄新聞掲載の記事を基に再構成しました>