愛馬の試練「下川の大雪」

  2016年1月19、20日に下川町は、降雪量85㌢の大雪に見舞われた。降雪の中でも日々除雪しながら、愛馬「ハナ」(ドサンコ)の調教を続けてきたが、小柄なドサンコにとって、特に当時幼かったハナにとって、そのときの大雪は大変だったようだ。
 19日早朝は暴風に伴う雪の吹き溜まりが道をふさぎ、餌などの世話でやっとだった。20日朝になると愛馬の放牧地や調教敷地も、130㌢以上の積雪に埋め尽くされた。放牧地を除雪すると、愛馬がうれしそうに厩舎から駆け出して走っていた。
 21日にはようやく雪も収まり、妻と愛馬の調教敷地を除雪。手に負えず雪を踏み固めて、愛馬を走らせたが失敗。一生懸命、雪の中を走ったがすぐに疲れ、その場に倒れ込んでしまった。
 厩舎へ引き返そうと愛馬の紐を引くが、愛馬は寝転がって「もう歩けません。限界です」と主張。やむをえず雪から掘り起こし、周りを除雪すると、ようやく歩いてくれた。
 22日も早朝から妻と手作業で除雪を続け、愛馬が円状に走れるように道を作り、やっと「調馬策」運動ができた。雪中に掘られた道を、指示に従って勢いよく走ってくれた。
 ドサンコが見られるのは主に、函館や釧路など積雪の少ない地域。下川のような豪雪地・道北で見る馬のほとんどは、丸太などを運ぶ「ばん馬」(外国馬)。ドサンコは極めて少ない。大雪の愛馬を見ると、その理由も納得できる。
 なるべく積雪時期も除雪の手間を惜しまず、愛馬を運動させたい。自分が頑張ることで、頑張れる馬に育ってほしい。
 この当時、3歳だったハナは心身共に幼かった。その後、深い積雪にも果敢に突き進む、たくましい馬に成長するのである。
 そしてこの数年間、下川町の降雪量は減少している。

<今回は2016年1月31日付名寄新聞掲載の記事を基に再構成しました>