シリーズ「大地を駆けるー地域おこし協力隊員紹介─」 2027年1月の就農目指して奮闘 下川町 杉木勝哉さん(33) 智子さん(31)

 勝哉さんは1991年6月、愛知県一宮市の生まれ。智子さんは93年6月、兵庫県神戸市の生まれ。2人は24年2月に下川町の農業支援員として委嘱を受け、2年目の現在は、上名寄の研修ハウスで農業活動に取り組んでいる。
 勝哉さんは大阪の大学を卒業後、大手企業で発電関係の職に就いていた。一方、智子さんはマスコミ関係の職に就き活動。2人は同じ大学で出会い結婚した。
 2人は農業支援員の委嘱を受け、1年目は上名寄で農業を営む三島卓さん宅のほ場での手伝いを経て、2年目の今年は町が保有する上名寄にある研修ハウス(栽培実習ハウス)で作業。トマト(モモタロウネクスト、冠美)栽培の他、自主栽培のチャレンジハウスで、キヌサヤを栽培する計画で、日々、奮闘している。
 地域おこし協力隊への応募について、勝哉さんは「北海道に関わらず地方への移住を考えていた。その中で、自分たちの責任の下に、自由にできる仕事に就きたい―と考えたときに、農業が選択肢の一つとして挙がった」という。
 智子さんは、もともとイベント企画などの仕事を行っており、地域おこしに力を入れているまち―を探していたところ、北海道どさんこプラザ(東京有楽町)で下川町の紹介を受け、見学に訪れたという。
 勝哉さんは「下川町はトマトのポット栽培という、他の町とは違う栽培方法に取り組んでいて、それが前職の発電関係の仕事と技術的に近いものがあったことが決め手となった」と話す。
 智子さんは「関西に住んでいた頃、夫も私も全国転勤のある企業で、この先、家族がばらばらになる将来がなんとなく見えていた。働き方を考え、農業に従事したいと思った」と語る。
 また、智子さんは大学時代、島根県海士町の地域再生の研究を行っていたとのこと。「私も地方で暮らすことに興味があり、地域で自分らしく働いている人に憧れがあった。町おこしに興味があったので、下川町はすごく元気があり、農業以外でも、さまざまな可能性のあるまちだと思った」という。
 現在は下川町の認定こども園に通う長男の綾吾くん(1歳半)と3人暮らし。下川町の印象について、2人は「目的を持ちながら、人生を主体的に生きている人が多いと感じる。移住する前に何度も訪れ、いろいろな人に会わせてもらい、実際に住んでからも違和感がない。地元の人たちは快く自分たちを受け入れてくれ、ここを選んで本当に良かった。ただ冬は寒いですけれども」と笑顔。
 同協力隊の任期は来年12月まで。来年は継承予定の農家の下で研修し、27年1月には就農を予定している。勝哉さんは「トマト栽培の他、グリーンアスパラや麦の栽培に取り組みたいと考えている」と将来を見据える。
 学生時代は2人で道内の観光地を一通り巡ったとのこと。作物から目が離せない大変な仕事としながら、合間を見ながら近郊を散策。「観光では分からない、近場でよりディープなところを巡っている」と話し、地域への愛着を深めている。