BOOK LAB.
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BOOKLAB.書籍紹介 鯨寄る浦 虎伏す野辺
虎とおばけが岩場から水面を覗いている。不思議な表紙だが、作品全体の奇妙な切なさや温かみが伝わってくるだろう。
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BOOKLAB.書籍紹介 榎本武揚
安部公房は不条理や鬱屈を通じて人間を描くことに卓越した作家だ。『箱男』や『砂の女』は今なお近現代の日本文学の一角を担っている。戯曲や短編などの作品を多く世に送り出した安部だが、本書『榎本武揚』は安部の作品の中でも珍しい歴史長編小説である。
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BOOKLAB.書籍紹介 ネコは言っている、ここで死ぬ定めではないと
死んだらどうなるんだろう、と考えたことはあるだろうか。意識はどこへいくのか。天国や地獄はあるのか。もしも生まれ変われるのならなにになろう。そんなことを考えるのは子どものうちだけだと感じる人もいるだろう。しかし、死について考えることをバカバカしく思うのは、それが本当にバカバカしい疑問だからではなく、考えてもわからない問いを前に、考えるのを諦めてしまっているからかもしれない。
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BOOKLAB.書籍紹介 夜叉ケ池・天守物語
誰しも、現実とは様相を異にする世界への思慕を抱いているだろう。フィクション作品に触れるとき、私たちは物語のあちら側と自分たちのいるこちら側という境界を強く意識する。登場人物や物語の背景への共感、理解あるいは拒絶という反応を通してその境界を越境することが、文学の楽しみ方の一つではないだろうか。
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BOOKLAB.書籍紹介 いなくなっていない父
写真家の金川晋吾には度々失踪を繰り返す父がいる。金川が幼い頃から職場にも家族にも何も言わずに数週間家に戻ってこないということを繰り返していた。そこに失踪したこと以上のドラマはない。父の失踪によって家族に危険が及ぶわけでも、また戻ってきた父が憔悴していた、警察の厄介になったというような事件が付随していたわけではない。彼はただいなくなり、そして数週間後にふらっと戻ってくる。
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BOOKLAB.書籍紹介 フィフティ・ピープル
著者:チョン・セラン 斎藤真理子(訳) 出版社:亜紀書房 出版年:2018年
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BOOKLAB.書籍紹介 飽きる美学
昨年末、辞書を出版する三省堂の発表した新語大賞が、大きな反響を呼んだ。元々は学術的用語だった「言語化」が、一般の人々に広く使われるようになったことから新語として選ばれたようだ。実際に生活していると、確かにSNSなどで目にする機会が多い表現である。
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BOOKLAB.書籍紹介 クレーの絵本
2024年を振り返ると、谷川俊太郎の他界が衝撃的な出来事として思い出される。大詩人の訃報を受け取ったその日、SNSは哀悼の言葉で溢れかえっていた。多くの人が、悲しみの言葉とともに、思い入れのある作品について言及していた。
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BOOKLAB.書籍紹介 ヤンキーと地元―解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち
12月10日夜、SNS上に流れてきたニュースに筆者は頭が真っ白になった。和光大学現代人間学部で講師を務めていた社会学者・打越正行のあまりにも早い訃報だった。急性骨髄性白血病によって45歳の若さで世を去ってしまった。
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BOOKLAB.書籍紹介 世界文学をケアで読み解く
「嫌知らず」という言葉がSNSを賑わせている。嫌だと言う相手に対して「自分は嫌じゃない」と聞く耳を持たない人を指す言葉で、嫌がる女性に気づかない・気づこうとしない男性が特に念頭に置かれる。