JR恩根内駅、初野駅 地域に根差した駅、別れ惜しむ 住民たちが列車見送る、自治会で「さよならイベント」

【美深】

JR宗谷本線の恩根内駅と初野駅が15日、最終営業を迎え、各駅で地元自治会による「さよならイベント」が開かれた。住民たちが集まって列車を見送りながら、地域に根差した駅への別れを惜しんだ。
恩根内駅は1911年11月3日に開設。86年11月1日に無人化された後、当時の木造駅舎は解体。貨車改造の待合室となったが、93年に美深町所有の待合室が設置。初野駅は48年6月に仮乗降場として開設し、59年11月1日に駅へ昇格。当初から無人駅だった。
両駅とも利用客減少を理由に、今年3月16日のダイヤ改正で廃止され、前日の15日が最終営業となった。
恩根内駅では、恩根内自治会が「さよならイベント」を開催、住民や鉄道ファンら80人が集まった。
待合室前には木造駅舎時代の写真も飾られ、「さよなら そして ありがとう 恩根内駅」の横断幕を掲げながら記念撮影した。
草野孝治町長も駆け付け「美深より恩根内の方が乗降客、貨物が多いこともあった。町内は6駅あったが、2021年に南美深、紋穂内、豊清水の3駅が廃止。恩根内駅は地域管理駅として利用されてきたが、今年、恩根内、初野の2駅が長い歴史に幕を下ろす。地域の方には愛着のある駅で、さらに寂しいと思う」と挨拶。
午後1時33分発の普通列車(稚内発名寄行き)を出迎え、横断幕を掲げながら列車を見送った。
恩根内駅から名寄農業高校(現・名寄産業高校)に列車通学していた酪農業の竹谷健一さん(57)は「学生の時、なじんでいた木造駅舎が解体され、駅員もいなくなり、その時で駅は終わった感覚だったが、待合室が新しくなり、社会人になって名寄や音威子府へ列車に乗ったことがある。駅が本当になくなるのは寂しい。自分のふるさとがなくなるような感覚です」と語っていた。
初野駅では、富岡、吉野、斑渓の3自治会による「さよならイベント」を開催。住民ら60人が集まった。
「初野駅75年間ありがとう!」の横断幕を掲げながら、午後1時44分発の普通列車を見送った。
また、待合室の前で記念撮影するなど、長年、地域住民に親しまれながら利用されてきた駅に別れを惜しんでいた。
草野町長は恩根内駅から初野駅まで乗車。「地域と議論を重ねてきた結果、地域利用者がほとんどいない中、駅廃止はやむを得ないとの結論を受け、駅存続は厳しいとのJRの最終判断を厳粛に受け止めたい。6駅あったものが、市街地の美深駅一つになるとは思っておらず、寂しさでいっぱい。自分も職員も出張の際、JRを利用するようにしているが、運転見合わせや旭川での乗り換え、間引き運転など不便さも目立ち、利用者を増やし赤字削減に協力し、北北海道の交通根幹の宗谷本線を絶対になくすわけにはいかない。駅廃止後の初野駅周辺、恩根内地区の皆さんにはバス路線維持、デマンド乗り合いタクシー運行で住民の足を守り、地域交通体系を維持確保したい」と語った。