6 滝川市の事例と市立大学国際交流センターの活動
外国人との協働・共生の取り組みを進めている滝川市の事例と、名寄市立大学国際交流センターの活動を紹介する。
滝川市の取り組み
滝川市では、1990年に「滝川国際交流協会」を設立。社団法人化を経て2013年に一般社団法人化した。
同協会は、滝川駅隣の滝川ターミナルビルに、市観光課、観光協会と一緒に入居している。協会参与の阿部孝志さんに電話等で取材し、協会の活動や外国人支援などの現状について話しを伺った。
滝川市には、約120人の外国人が居住し、およそ半数が技能実習制度、特定技能制度で働いている。
国際交流協会には、役員を除いて常勤職員3人、コーディネーターなどの非常勤職員4人の合計7人が勤務しており、主な事業として、国際交流事業、国際協力事業、国際理解事業、調査研究資料提供事業―の四つを実施している。
外国人の日本語教室については、文化庁の「『生活者として外国人』のための日本語教室空白解消推進事業」の採択を受け、21年度~23年度までの3年間実施した。
具体的には、多文化共生のためのシンポジウム、アドバイザーの派遣、外国人や事業所などへのアンケート調査のほか、日本語教室「たきかわ にほんご ひろば」を開催。同広場には、一般市民も、サポーターとして活動していた。
22年度は、試行的に日本語学習の場と、対話交流型の日本語学習支援による教室を全10回開催し、23年度は5月から2月まで月2回程度、全16回開催した。
文化庁の事業が終了した24年度においても、月に1回程度の開催を予定している。
次に、外国人に対する日常的な支援としては、日本語を学んでもらう事の他、外国人が住民の一人として、地域の行事や日本人との交流に参加することで、帰属意識を持っていただくことを目指しており、職場や自宅(家庭)の他、第三の居場所づくりなどに努めている。また、行政と連携しながら、可能な範囲で相談などにも応じている。
一方で、「日々工夫しながら広報などでアナウンスしているが、必要な情報が外国人に届いているか、いつも疑問があり、ダイレクトに伝える難しさを感じている」とのことで、模索しながら、色々な取り組みを進めていることが伺えた。
名寄市立大学国際交流センター
名寄市立大学の教養教育部長で、国際交流センター長を務めるメドウズ・マーティン教授に、同学の国際交流の活動状況について話しを伺った。
同学では、開学以来、国際交流の推進に努め、韓国を中心に短期語学留学生などを受け入れてきた。外国人材活用担当の藤井さんの協力もあり、昨年と今年の3月に、JICAのスタディツアーを実施した。
今年のツアーは、学生13人と引率2人の合計15人で参加。前半は全員で、タイを訪問。現地の協力隊員と活動内容などを意見交換し、大学や畜産センターなどを視察した。後半は、2班に分かれて、ネパールとフィリピンを訪問し、現地のNGOなどと交流した。
スタディツアー実施の効果として、「参加した学生は、国際協力などへの理解・関心が深まり、英語への意欲も増した」と、メドウズセンター長は述べている。
本年度の活動としては、2回のスタディツアーの実施と、5年振りの短期語学留学生の受け入れを予定している。今年は、受け入れにあたり、ホームスティを検討しているので、希望者は応募してほしいと話している。(日程等はホームページなどで公表)また、市内で暮らしている外国人に対しては、相談事などがあれば、連絡してほしいと述べている。(E-mail:meadows@nayoro.ac.jp)
終わりに
外国人も含めた「協働」の地域社会実現のため、外国人や外国人を雇用する事業所の声と、滝川市の事例や市立大学国際交流センターの取り組みなどを紹介した。
地域で暮らす外国人にとって最大の問題は、日本語の理解であることから、日本語教室の開催などを検討する必要がある。
また、外国人は特別な存在ではなく、普通の市民なので、助っ人扱いするのではなく、地域づくりの一員として、しっかりと位置づけることが大切だ。市民などと、身近に触れ合うことができる機会の提供なども一つの方法であろう。
例えば、外国人と市民、学生などが定期的にふれあう「交流サロン(仮称)」のようなものを集まりやすい場所に設置し、居住する外国人と支援者、市民や大学生などの交流を促すことも必要だ。その中で、不安などの解消につながることもあるだろう。
名寄市では24年度から、外国人の人材活用や支援を含めた国際交流・国際協力を扱う部署として、交流推進課が、経済部から総合政策部に移管された。これまで述べてきた課題に、的確に対応していくためにも、新たな役割が期待される。
日本の労働力人口(15歳~64歳)は、年々減少しており、今後も続く。第5回で触れたように、今後は、「外国人材の奪い合い」が予想される。「名寄市で働き、生活したい」と思ってもらえるよう、「協働」の地域社会をめざして、市民全体で取り組んでいくことが必要であろう。