下川小学校(高舘正司校長)は本年度、1年生17人の「生活科」として、筆者が飼うドサンコのハナ(馬)と継続的に触れ合うことで、生き物に親しみを持ち、命を大切にする心を育む授業に取り組んでいる。
1年担任の勝本真帆教諭から町教育委員会の仲介で筆者に相談があり、授業のある日は登校時間から放課後まで学校敷地内に簡易柵を設け、敷地内の草を食べさせながらハナを放牧。授業以外でも教職員の見守りの下、中休みや昼休みに児童が餌をあげるなど触れ合っている。
授業の初回は8月23日で、放牧中のハナを観察。おいしそうな草を選び、食べやすいように意識しながら餌をあげていた。勝本教諭は「児童たちは朝からハナちゃんがいることに大興奮。小さい頃から知っているハナちゃんと、いっぱい関わることができてうれしそう。教室から放牧の様子を見て、たくさん草を食べること、柵の近くで見て、食べる草と食べない草があることにも気付いた」と言う。
2回目(2時間)は8月28日に1年生全員が順番に乗馬。勝本教諭は「ハナちゃんに乗れて喜んでいた。数分ずつだったので『もっと乗りたい』と話す子が多かった。ハナちゃんの距離がぐっと近づいたようで、乗馬の後『ありがとう』とハナちゃんの頬に触れた児童がたくさんいた。『餌やりが怖い』と言っていた児童も表情が柔らかくなり、優しく声をかけていた」と語る。
3回目は8月30日、馬と心の会話をしながら一緒に歩く「ひき馬」を学習。筆者の実演の後、勝本教諭に体験してもらいながら、1年生もうまくひき馬をできる方法を考え助言。ハナにブラッシングをして絆を深め、ふんを畑に運ぶ作業も体験してもらった。勝本教諭は「児童たちは、気持ちを伝えるとハナちゃんが動いてくれると知った。気持ちを伝える、相手の気持ちを考える大切さを感じた様子で『ハナちゃんは○○って思っているかも』と相手を思いやる発言が増えた。最初は気付いてほしくて大声だった声かけも、優しくなったと思う」と話す。
4回目は9月11日、離れた場所から馬を行かせたい方角に、発進、加速、減速、停止させる「調馬索運動」を通し、気持ちが伝わって馬が動く様子、馬の走る姿を観察。筆者の調馬索実演後、1年生は放牧中のハナについてきてもらう「呼びかけ」に挑戦した。いろいろな方法を試して変化をつけながら、意識を向けることを考えるきっかけとした。
勝本教諭は「『走るハナちゃんってかっこいい』と喜んでいた。前回学んだ『気を伝える』をさらに感じ、ハナちゃんへの声かけがうまくできた理由、できなかった理由を考える機会となった」と言う。
また、1年生たちから授業のない日もハナを放牧してほしい―との声を受け、9月の9日から13日まで(10日除く)は毎日ハナを学校に連れていき放牧。「ハナちゃんにおいしいものを食べさせたい」と、リンゴ、ニンジン、トウモロコシ、クローバーなど、おのおのおやつを持ってきてハナに与え、触れながら絆を深めたようだ。ふんは筆者で回収している。
勝本教諭は「児童たちがハナちゃんとより親しくなったと思う。教室の窓からハナちゃんがふんや尿を出すところ、寝ながら草を食べ、ゴロンと寝る様子も見ることができた」。
継続的なハナとの触れ合いに「子どもたちの興味関心が高まり、ハナちゃんのために―と、相手を思いやる言動が増えた。学びが友だち同士の関わりにも生きてくることを願う。この活動が来年も続くとうれしい」と話す。
授業は全部で10時間を予定し、冬のハナとのふれあいも予定。冬のハナの毛、餌、暮らし方などに触れ、夏との違いを体験する。
<2024年9月30日付名寄新聞掲載の記事を基に再構成しました>