【中頓別】
1918年(大正7年)創業、町内の井野畳店が、8月末を以って閉店する。これまで懸命に畳を作り続けてきた井野幸夫代表(73)は社会情勢の変化や生活様式の変化、自身の高齢化が主な理由とし「先々代の祖父の時代から今まで大変お世話になった。沢山の支えがあって続けてこられた」と感謝を述べた。
井野畳店は井野代表の祖父・井野平蔵さんが創業。2代目の父・伴治さんの後を継ぎ3代目となったのは91年頃。旭川市の畳店で修行後に帰郷し、父の背を追い職人技を学びながら、3代に亘って100年以上もの間、暖簾を守り、伝統の畳産業を維持してきた。
修行していた旭川から幸夫さんが戻ってきた40〜50年前の中頓別町は国、道の公共機関も集中しており、公営住宅の建設が活発。その頃の家は畳を敷いた和室スタンダードの時代。「1000〜2000畳と注文が入り、本当に忙しくさせてもらった。毎日くたくたになりながら仕事をしてましたよ」と懐かしんだ。
しかし、時代の変化が進むにつれ、徐々に家の造りは和室から洋室へシフト。新築の家では1軒に1〜2部屋が一般的となり畳の需要が減少。それに伴い関連産業の廃業も進み、畳を製造するための設備や細かい道具などの修理や更新も容易ではなくなった。
近年は既存の和室の畳の張り替えや修理を担う。作業場では幸夫さんが畳を縫い合わせる逢着機を器用に操作しながらミリ単位で調整し1枚ずつ丁寧に仕上げている。
黙々と進められる職人技。1枚を仕上げると笑顔で「閉店の話を聞いたお客さんから修理の注文が沢山きてね。早く仕上げないと8月じゃ間に合わなくなっちゃうよ」と話し、感謝の思いを込めながらこだわりと強い信念で畳に魂を燃やし続けている。
(川村竜也)
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