地域とともに歩む名寄市立大学6

6 地元への就職と就職者の声

名寄市では、地元への就職を促進するため、「地元定着化推進事業」を実施している。地元に就職した学生に一人当たり20万円助成し、そのうち奨学金を返還している学生には、返還金額の3分の2を3年間支給している。
名寄市内に就職した学生の推移を直近5年間でみてみると、2018年度は13人、19年度19人、20年度22人、21年度12人、22年度10人の合計76人(年平均15.2人)が就職している。
事業所別では、最も多いのは名寄市立総合病院で、名寄市、社会福祉事業団、社会福祉協議会、病・医院、幼稚園・保育所、社会福祉法人、民間企業、農園など、多くの事業所に就職して活躍している。
次に、市外・道外から入学して、名寄市内に就職した4人の方を紹介する。


及川彩優さん

及川彩優(おいかわあゆ)さん(23歳)は、岩手県花巻市の出身。
2023年3月に名寄市立大学社会保育学科を卒業し、同年4月から名寄カトリック幼稚園に幼稚園教諭として勤務している。
同園では、3歳(年少)児21人を担任。
名寄市立大学に入学した理由として、3姉妹の一番上で、国公立大学を希望していたこと、少人数教育の実践、4年間かけて保育をじっくりと学びたかったことなどを挙げている。
学生時代は、野球サークルに所属して男子と一緒に練習し、また、アルバイトも、焼き鳥店とスーパーの両方を掛け持ちするなど、忙しい毎日を送っていた。
就職して、9カ月が経過。子どもの成長などについて、「学生時代の実習では、短期間しか関わることができなかったけど、毎日、園児と触れ合い、日々の成長を実感することができ、やりがいを感じる」と話す。
また、今までは、仕事を覚えるので精一杯だったので、今後は、少し余裕を持って、「子どもたちと一緒に自分も成長していきたい」と意欲を示す。
名寄のマチの印象として、とても住みやすい。一方、転勤者が多いこともあり、保護者の両親(祖父母)が近くに住んでいない場合が多く、保護者対応にも気を使うことが多いという。
同園の柴田沙知園長は、「責任感を持って、明るく元気に子どもたちと接し、よく頑張ってくれている」と話す。
趣味は、「手芸や、ものづくりです」と笑顔で話す。


田上茉奈さん

田上茉奈(たがみまな)さん(24歳)は、岩手県盛岡市の出身。
2022年3月に名寄市立大学社会福祉学科を卒業し、同年4月に社会福祉法人名寄みどりの郷施設入所支援事業所「名寄丘の上学園」に就職した。
同園では、社会福祉士の資格を持ち、主に入所者の生活指導・支援などの業務を行っている。
名寄市立大学に入学した動機として、少人数教育や連携教育などの充実を挙げている。はじめは、父親に反対されたものの、説得して初志を貫徹した。
大学の実習は、特別養護老人ホームであったが、現場で色々な経験を積みたかったこともあり、同法人への就職を決断。また、学生時代に吹奏楽サークルに所属していたこともあり、名寄吹奏楽団との交流があったことも、後押しとなった。同楽団では、打楽器を担当し、現在も週2回練習を続けている。
丘の上学園では、生活指導全般を担当しており、週1回の夜勤もある。「最初は不安がった。距離感があり、会話をするのが難しかった入所者と、次第にコミュニケーションが取れるようになってくると、うれしく、やりがいがあります。この仕事は、天職と感じます」と笑顔で話す。
大学の卒業論文では、自衛隊の相談員にインタビューし、「部隊相談員の活動」と題したレポートをまとめた。
同園の横田一真施設長は、「ご縁があって当園に就職してくれた。現場で頑張ってくれており、今後も、引っ張って行ってほしい」と期待を寄せる。
趣味は、吹奏楽とドライブ。「休日は、中川、興部、幌加内など、近隣を回るのが楽しい」と笑顔で話す。


服部真治さん

服部真治(はっとりしんじ)さん(24歳)は、青森県陸奥市の出身。
2022年3月に名寄市立大学社会福祉学科を卒業。同年4月から、マイステイズ名寄に勤め、2年目を迎えている。
マイステイズは、東京を本社に、道内・道外の主要都市でホテルを展開しており、同名寄では、70の客室に130人を収容し、従業員もパートを含めて約30人を雇用している。
名寄市立大学に入学した理由として、地域密着で少人数教育を掲げていることや、オープンキャンパスの印象が良かったこと、一度、県外に出てみたかったことなどを挙げている。
学生時代、ゼミを通して、過疎地域高齢者の一人暮らしなどの実態調査に携わり、高齢者とのふれあいや地域とのつながりができ、住みやすさなどもあって、名寄市への就職を決めた。学生時代に4年間、同ホテルで週に2~3回アルバイトをしていたことも決め手となった。
ホテルでは、受付、電話などのフロント業務のほか、客室業務も含めて幅広い業務をこなしている。
山田孝宏マネージャーは、「積極性も出てきて頑張ってくれている。従業員のみんなから、かわいがられている」と話す。
名寄のマチの印象は、「過ごしやすく、食べ物もおいしく住みやすい」。休日は、ドライブが好きで、旭川や紋別方面へドライブを楽しんでいる。
趣味は、旅行と食べ歩きで、「ドライブの際は、現地の美味しいものを食べるのが好き」と、笑顔で話す。


下村瑠奈さん

下村瑠奈(しもむらるな)さん(23歳)は、青森県八戸市の出身。
2023年3月に名寄市立大学看護学科を卒業し、同年4月から、名寄市立総合病院看護部3階東病棟に看護師として働いている。
名寄市立大学を選んだ理由として、市民と学生、大学と学生の距離の近さ、先輩の助言、オープンキャンパスの印象が良かったことなどを挙げている。
大学では、脳梗塞などによる失語症のリハビリなどについて研究した。
入学後の4年間、農家での収穫、JAの選果場、イオン、マックスバリューなどでアルバイトを経験。「多くのアルバイトを経験したことで、市民の皆さんと知り合い、助けられました」と話す。
市立病院には、このようなつながりもあって、3年次から2年間、同院の奨学金を受け、就職を決めた。
勤務する病棟では、主に脳神経外科、呼吸器科などの急性期の患者を担当しており、「患者さんが、リハビリなどが進み歩けるようになって、ナースステーションにお礼に来た時などに、喜びとやりがいを感じます」と笑顔で話す。
上司の瀬川美佳穂3階東病棟看護科長は、「入職後9カ月。夜勤業務を担うまで成長しました。今後の活躍に期待しています」と話している。
名寄の印象として、「小さいけど、商業施設なども整っていて暮らしやすい」とする一方、「雪も多く寒い」と話す。
趣味は、散歩や同期の友人との食事をすることで、来年は車の購入を予定している。