地域とともに歩む名寄市立大学7

7 公立大学の現状と法人化・大学の収支

社会保育学科設置年度(16年度)入学式①

都道府県や市町村などが設置者として運営する公立大学は、2023年4月現在、名寄市立大学を含めて全国に100存在し、1990年代以降、着実に増加している。
要因として、地域における学生の進学機会の確保、産業振興、「看護師等の人材確保の促進に関する法律」(1992年度)が促した保健福祉人材の確保、短期大学の改組などが挙げられるが、公立大学を設置することで、若者の定住などによる地域の魅力や価値を高めていこうとする各自治体の判断があったものと考えられる。
100の公立大学のうち、自治体直営の大学は9大学で、残り91の大学は、地方独立行政法人法に基づき、地方自治体が設立した公立大学法人が運営している。
一般的に言われている法人化のメリットとしては、組織運営では理事長(学長)のリーダーシップによる意思決定の迅速化、人事制度では独自の人事給与システムの構築・運用、臨機応変の職員採用、事務局職員の専門性向上、非公務員化による民間との連携、兼業・兼職の弾力化による教育研究活動の活性化などが挙げられる。目標・評価では、中期計画(6年)の策定による計画的な運営と結果の公表による透明性の確保、財務会計では、企業会計の導入と正確な財務諸表の作成、自由度の高い予算執行・管理などが挙げられている。
次に、デメリットとして言われているのは、権限集中による多様な意見反映の懸念、人事給与・財務など各種制度・システムの構築による事務負担・経費負担の増大などが挙げられている。
なお、法人化は設置団体の議会の議決が必要となっている。
名寄市では、「第2次名寄市総合計画後期計画」及び「名寄市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中に独立行政法人化の検討を盛り込んでいるが、議論はあまり進んでいない。法人化を実施するにせよ、直営のまま運営するにせよ、設置者・市議会・大学内の議論を市民にみえる形で進めてほしい。
《大学の収支》
短期大学の設置当初は、国からの地方交付税などによる財政支援がないため、収支は赤字が続いていた。弊社1962年12月12日付では、「投資財源を圧迫/年々ふえる一般会計の繰出し/お荷物は短大に上水道」という見出しが躍っている。記事では、「61年度予算で一般会計から特別会計へ繰り入れした金額はざっと3139万円。繰入のトップは、なんといっても鳴もの入りで設置した女子短大(以下一部省略)。一日も早く国への移管をという機運を高めている」(以下省略)と記されている。第1回でも触れているが、財政問題は、大学の存廃・道立移管問題へと発展していった。
その後、粘り強く財政支援を要望した結果、特別交付税による措置を経て73年度から普通交付税で措置されるようになったが、短大の場合、大学に比べて単価が低く、また、家政系は保健系に比べて低かったこともあり、収支的にはマイナスが続いていた。4年制化する前年度(2005年度)の学生一人当たり地方交付税措置額は、看護学科が100万9千円、生活科学科が75万円であった。
06年度に名寄市立大学が開学した。大学の場合、地方交付税で措置される金額は、学部単位で決定するため、保健系の保健福祉学部の誕生は財政的にも朗報であった。全学年の学生がそろった09年度以降の収支は安定しており、23年度は学生一人当たり166万8千円が措置されている。