地域住民の命と暮らしを守る「名寄市立総合病院」2

2 名寄市立総合設置後の経過②・病院の概要・収支・経済効果等
1992年に完成した新病院建設後も、患者数が増加してベッド数が不足したことから、2階西病棟と人工透析棟の設置などの増築工事を行い、99年4月に稼働した。これにより、一般床は300床となった。2007年~08年には、救急棟の設置、医局の拡充などの増築を行った。
13年には、老朽化した精神科病棟を中心とする改築工事を行い、14年5月に新館が竣工した。1階は、心療内科・精神科、眼科、麻酔科の外来とデイケアホールなど。2階は、精神科病棟55床。3階は、体育館(ホール)、会議室、事務室など。屋上には、ヘリポートを建設した。
15年8月には、かねてから指定を目指してきた地域救命救急センターの指定を受けた。道内12カ所目で、旭川以北の指定は初めてであった。同年12月にはドクターカーの運用を開始し、救急医療の充実に努めている。
17年11月には、開院80周年の記念式典を開催。
18年4月からは、地方公営企業法の全部適用を実施し、経営の迅速化、効率化などに努めている。
20年4月には、北海道認知症疾患医療センター(地域型)の指定を、同年11月には、新型コロナウイルス感染症重点医療機関の指定をそれぞれ受けた。
20年の新型コロナウイルス感染症発生以降は、感染患者の対応などに積極的に取り組み、コロナ危機を全職員の力で乗り切った。
23年度から老朽化した手術室の改修工事を進め、24年10月にハイブリッド手術室を備えた最新の手術室が完成した。
病院の概要
23年度末の病院の概要は、診療科22科(内科、循環器内科、呼吸器内科、神経内科、消化器内科、糖尿病・代謝内科、小児科、外科、心臓血管外科、呼吸器外科、整形外科、脳神経外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、皮膚科、心療内科、精神科、放射線科、麻酔科、救急科)に、医師66人、薬剤師11人、助産師・看護師・保健師等339人、医療技術職員等86人など、合計754人の職員(会計年度任用職員を含む)で、患者への安全・安心な医療の提供に努めている。
1年間の取り扱い患者数は、入院で8万2645人、外来で21万4379人、対前年の比較では入院で31人の増加、外来で8395人の増加となっている。
23年度末の病院収支
収支については、病院事業収益は94億3264万5千円、病院事業費用は98億6808万1千円で、差し引き、4億3543万6千円の純損失を計上しての決算となった。
昨年は、約2億円の黒字決算であったので、2年振りの赤字決算となった。コロナ関連の国の補助金が大きく減少したことが大きい。
また、病院事業会計(市立病院分)に対する一般会計からの繰出金は、11億7846万9千円で、病床数や救急医療などに対して措置される地方交付税分を除くと、いわゆる一般財源からの支出は1億2千万円(2千万円は看護師等の奨学金)となっている。
職員の居住による経済的な効果等
市立病院には、23年度末で職員及び会計年度任用職員を合わせると754人が在籍する。これに、職員家族、調剤薬局、医薬品などの納入業者を合わせると、少なくても千人以上が名寄市に居住すると想定される。
千人の居住は、人口の約4%強を占め、人口を基本として積算される地方交付税の中に約1億5千万円が措置されている。その他、市民税、固定資産税などの市税収入のほか、消費効果として、一人当たり一月平均で5万円~10万円程度の消費が見込まれ、年間では6億~12億円程度となる。
経済的な効果のほか、圏域も含めた地域住民が安全・安心に暮らしていくには、地域医療の充実が欠かせない。そういった面でも、市立病院が果たす役割は大きい。 (松島)