5 救命救急センター
2015年8月に、救命救急センターに指定されたことは第2回で述べた。
道内には、23年12月現在、大学病院など13の救命救急センターが設置されており、うち、名寄市立総合病院と砂川市立病院は地域救命救急センターである。
地域救命救急センターは、通常の救命救急センターと比べて、設備、人員体制、機能などは同じであるが、専用病床については、20床以上必要なのに対して12床以上20床未満となっている。市立病院では、ICU病棟に8床、2階西病棟に2床、4階東病棟に2床の合計12床を確保している。
市立病院の休日・夜間の受け入れ態勢は、医師が2人(うち1人は小児科)、看護師2~4人、臨床検査技師1人、放射線技師1人の合計6~8人で、24時間365日、重症患者などを受け入れている。
救急の受け入れ状況について、2018年~23年までの6年間の①救急外来受診患者数と転帰②救急車による搬入患者数と転帰③ドクターヘリ搬入患者数④ドクターカー搬入患者数を別表1にまとめた。
2023年の状況は、救急外来の受診者数は名寄市内5461人、名寄市外3039人の合計8500人(前年比1824人増)、救急車による搬入患者数は名寄市内1165人、名寄市外899人の合計2064人(105人増)、ドクターヘリ18人(1人減)、ドクターカー11人(9人減)となっている。1日平均では、救急外来に23.3人が受診し、救急車により5.7人が救急搬送されている。
また、6年間の市内・市外の比率は、救急外来受診者数では名寄市内が61%、市外が39%、救急車による搬入患者数は名寄市内が52%、市外が48%となっている。このように、市外からも多くの救急患者を受け入れている。
砂田大貴救命救急センター長に、救命救急センターと救急科の現状や課題について話を伺った。
砂田センター長は、17年3月旭川医科大学を卒業し、同年4月に名寄市立総合病院で2年間研修医として勤務。その後、旭川医大、医療センターなどを経て本年4月に救命救急センター長・救急科医師として着任した。
救急科には、現在5人の医師が所属。病院全体の当直(宿日直)の他、救急患者や救急車に対応する「ファーストコール」は4人で対応している。砂田センター長は、1カ月の約3分の1を当直かファーストコールの当番をしている。ファーストコールを担う4人の医師の時間外は、24年度の上半期でみると月平均52~76時間。市立病院が、北海道から時間外の特例を受けている七つの診療科に、救急科も含まれている。
砂田センター長の10月某日の「救急科の1日」は、別表2の通りである。
研究活動を含めると、病院での滞在時間は、相当な時間に上る。
次に、昨年の救急搬送件数は、2064件と過去最高となり、全道・全国的にも増加している。砂田センター長は、「救急科の医師は以前より増えているが、足りてはいない。看護師も不足している」と述べ、マンパワーの不足を課題に挙げる。
ポラリスネットワークの普及により、「現地の病院のニーズに応え、不要な救急搬送が減るなど一定の効果がある」と話す一方、「大学病院を含めて全道・全国に広がることが望ましい」と期待を込めて語る。
また、市民の皆さんには「症状があるのに、時間が経って土日に受診する方がいる。休日・夜間は人員や検査態勢などが限られているので、症状があったら土日の前に受診してほしい」と呼びかける。
3次医療を担う名寄の救命救急センターは、四国4県とほぼ同じ面積をカバーしている。救急医療体制を維持するためにも、市民の一定の理解が必要であろう。
(松島)