2023年に下川町南町の美桑が丘で、指定管理者・NPO法人森の生活自主事業の一環として「馬の拠点づくり」が進む。管理棟南側には、北海道和種馬(ドサンコ)ハナの家(馬小屋)が完成した。
美桑が丘は町認定こども園、中学校、宿泊施設「ヨックル」、桜ヶ丘公園「フレペ」から、気軽に徒歩で行ける森林で、2010年に町が森林文化創造のシンボルとして用地を取得して町有化。12年度からアイデアを広く募り、住民主体でさまざまな活動を展開している。当初、住民から出たアイデアの柱の一つに「馬を生かした里山づくり」があり、馬の林間放牧による植生回復の実証実験も行われた。
筆者はその頃、馬のある暮らしをつくろうと思っていたため、この活動に賛同。自分で馬を購入して飼い、美桑が丘の林間放牧も、そこで活動する方たちと、自分の馬で継続することにした。その馬がハナである。
美桑が丘の町有化から10年。再び住民と行政で美桑が丘の運営、活動の在り方を考える機会があった。基本の姿を「それぞれがやりたい活動を、他の活動や地域資源と有機的につながりながら実践し、さまざまな活動を展開することで、公共の利益も生み出す場」「子どもの居場所づくり」とし、持続可能な運営を模索することになった。
筆者は当初、ハナの放牧拠点は単独で設けて、美桑が丘は出張放牧先の一つと考えていたが、基本の姿を踏まえ、自己投資で美桑が丘に「馬の拠点」を設ける決意をした。
公共の場に多額な自己資金を投資するのは「不安」もあるが、単独で行うこと以上の価値があると思ったし、自己資金による自主活動がつながっていくことで、美桑が丘全体の維持に結び付くのではないかと思った。
具体的にはこれまでの林間放牧に加え、積雪シーズン用の馬小屋と柵を整備。通年で馬を放牧できる環境を整え、冬も子どもたちをはじめ、住民の方々が気軽に馬と触れ合えるようにする。美桑が丘の活動と一層、つながりを深めることで好循環を目指す。
美桑が丘の利用者の皆さん、町の担当職員と2年かけて話し合い、計画を煮詰めた上で、今春から指定管理者の自主活動の一環で着手。材料は地元産木材にこだわった。
豊富な経験で森の生活とも関わりのあるNさんに指導していただきながら、森の生活スタッフの方々による支えのもと準備を進め、Nさん、筆者と妻が中心となって、6月から馬小屋を建て始めた。
時には地域の方にも参加いただき、2023年9月17日の「みくわの日」(月1交流の場)には中間披露として、馬小屋の上から菓子まきを行った。
10月15日の「みくわの日」では、完成したばかりの馬小屋にハナを入れてみた。管理棟南側から見て正面の出入り口扉には餌箱がついており、外から小屋にいるハナに餌をあげ、食べている様子も見ることができる仕組み。この日も来場した方々に、この餌箱から餌をあげていただいた。
ハナはこの年の冬も三の橋の牧場で過ごすが、次の2024年には美桑が丘で積雪シーズン対応用の柵も完成させ、冬の放牧を目指す。
<今回は2023年11月4日付名寄新聞掲載の記事を基に再構成しました>