【名寄】
名寄市立大学(家村昭矩学長)社会福祉学科1年の谷本愛珠(あいす)さんは、一部で介助を受けながら、学生寮から車いすで通学している。
夏期間は、雨の日などを除いて車いすで通学。冬期間はタクシーの利用を予定していたが、経済的負担が大きいことから、名寄市社会福祉協議会の小笠原志朗係長、鈴木咲希さんらの協力で、送迎ボランティアの力を借りて通学している。
谷本さんは、2007年1月に愛別町で生まれ、3月に旭川志峯高校を卒業、4月に同大に入学。中学生までは通常の生活を送っていたが、高校1年生の冬に右手、右足にまひ症状が現れた。3年生の夏になると右手と両足の感覚がなくなってきて車いすでの生活を余儀なくされた。この間、右手はリハビリで回復してきたが、両足のまひは続いている。
現在も通院しているが、確定診断がなされていないため、身体障害者手帳は交付されておらず、公共交通機関料金の割引など、制度の恩恵は受けられていない。
この間、小笠原さん、鈴木さんから、病院の付き添いや相談など、多くの支援を受けて生活しており、車いすも、小笠原さんの知人から貸し出しを受けて利用している。
冬期関の送迎ボランティアは、社協のボランティアセンターと谷本さんが相談して実現。11月20日から募集し、現在18人の学生がシフトを組み、今月1日から送迎を実施している。
11日の登校支援は、山内美侑さん(社会福祉学科1年)と長谷川美里さん(社会保育学科3年)が担当。
午前8時20分に学生寮に集合。出発前に、車いすキャスター用のスキー「ホイールブレード」を装着して出発した。
前日からの降雪で歩道にも雪が積もり、除雪車の影響で交差点が段差になっていることもあって、大学の図書館棟まで約30分かかった。
送迎ボランティアの長谷川さんは、「特別支援の授業の中で、車いすを使うことになったら、どのように使うか不安があったので、ボランティアに応募しました。ボランティアは今日が初めて。車輪の前にソリのようなものがあるのは初めて知りました。段差もありましたが、思ったよりやりやすかった。これを機会に、日常生活の中で手を差し伸べる勇気が出るようになれたら良いと思います」。
山内さんは、谷本さんとは友人同士と話し、「ボランティアは今日が5回目です。雪が深いところは大変でした。暖かい日にブレードが外れたこともありました。高校時代は車いすを利用する人のことを考えたこともありませんでしたが、このような機会を得て、障がいを持っている人への視点などが広がるような気がします。病院のソーシャルワーカーの仕事に興味を持っています」と、それぞれ語ってくれた。
ボランティアの支援を受けることになったことについて、谷本さんは「最初は、友達が手伝ってくれることは、ありがたい半面、少し嫌な面もあり迷っていました。自分を助けてくれるプラス面、ボランティアの人もプラス面があると思い、お願いしました。他の学年や学科が違う人とも知り合いになれて良かったです」と話す。
谷本さんは、中学生時代から「特別支援学校で子どもたちに教えること」が夢であったため、特別支援学校の教員免許取得を目標にしている。学生生活についても「楽しい」と笑顔で語る。
こうした取り組みと谷本さんについて、小笠原さんは「さまざまな事情で困難が生じてしまっているが、その中で、名寄市を選んでくれました。本人の生活を、周囲の方々との支え合いの中でサポートしていくことが、本人だけではなく、関わる方にとっても良い経験になると思います。今後の学業や生活に生かしていってほしい。こういった活動が、他の地域での支え合いにも広がっていくのではないかと期待しています」と語った。


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