上川町で初の「森の総会」 多様な参加者が町有林の未来を議論

上川町で23日、町有林のあり方を町民と考える初のフォーラム「森の総会」が開かれた。町民や関係者ら約40人が参加し、現地見学とパネル討議を通じて森林の現状と未来について多角的に意見を交わした。

午前中は参加者が町有林を歩き、作業道の開設現場や間伐が進む林地を視察。江差牛山遺跡や研究対象地も訪ね、管理担当者の説明を受けながら森の実態を体感した。

午後のパネル討議では3人が登壇し、それぞれの立場から提言した。
林業家の清水省吾氏は「環境保全型林業」を掲げ、小規模で多様な産業と結びつく新しい林業の可能性を紹介。
上川町役場の平松悠揮氏は、社会が「利益重視」から「共同体重視」へと価値観を転換する中、町有林活用にあたっては「アイヌ文化を参考にするべき」と述べた。
養蜂に詳しい立石貴久氏は、ミツバチをはじめとする花粉媒介者の存在がもたらす経済効果を示し、多様な広葉樹林を育てることが豊かな環境と産業を支えると強調した。

続くパネルディスカッションには、アイヌ代表の伊澤フサ子氏と早坂賀道氏も登壇。「自然界の存在すべてをカムイ(神)として敬う」というアイヌの根本的な自然観を紹介し、人と森が互いに喜び合える関係を築くことの大切さを語った。

参加者は議員や森林組合、林業者、産業関係者、教育機関、NPOなど多彩で、アンケートには「アイヌ文化と森の関わりをもっと知りたい」「継続的に総会を開いてほしい」といった声が寄せられた。

主催者は「予想以上に多様な人が熱心に耳を傾けてくれた。環境への理解度の高さを実感した」と話す。今後は月1回程度、町民が意見を交わせる場を設け、インスタグラムで情報発信も継続。次回は9月21日、こどもたちやアイヌの人々が話し手となる予定だ。

「町有林をコモンズ(共有財)として機能させるために、話し合いを文化として根付かせたい。町と人と森が互いに配慮し合う未来を築きたい」と主催者は展望を語った。 

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