全国各地でクマによる被害が相次ぐ中、本紙管内の3市町(名寄市、下川町、美深町)でも対策強化に向けて取り組んでいる。3市町で人的被害は報告されていないが、近年は市街地での出没が増加傾向にある。今年、名寄市内の道立サンピラーパークが出没の影響で閉鎖となった事例もあり、駆除対応も含めた、より一層の安全対策の強化が求められている。
本年度の全国のクマ被害は、秋シーズンにかけて顕著に増加し、特に北海道、東北地方を中心に被害が報告されている。人身被害件数は197件となっており、統計開始以降で最多ペースだ。
今月6日現在の死者数は13人で、過去最多となった2023年度の6人を大幅に上回っている。
この事態を受けて環境省は、国全体で対応に乗り出す異例の態勢を敷いており、警察によるライフル銃の使用や、自衛隊も出動させて対応。自治体レベルでも、クマ専門家の育成も含め、出没情報の発信や住民への注意喚起、捕獲活動などの対策強化に取り組んでいる。
3市町の今シーズンのヒグマ状況をみると、名寄市は13日現在、出没件数が103件で前年よりも20件少なく、駆除頭数も前年比1頭減の14頭。被害は例年よりも少ない状況だが、スイートコーン食害などの農作物が大半を占めた。
昨シーズンよりも総体的に被害は減少したが、今年7月、親子を中心に多くの人たちが利用している道立サンピラーパーク内の交流館近くでヒグマが出没したため、安全対策として施設を閉鎖した。
また、近年は市内市街地での出没も目立つようなってきているため、3年前から「春期管理捕獲」を実施して人里への出没抑制などに取り組んでいる。
担当する市経済部耕地林務課では、地域住民の安全をより強化するために新たに設けられた緊急銃猟制度への対応について、「警察や自衛隊による対応の動きも見極めながら制度の在り方を検討したい。また、地域おこし協力隊を活用したハンター育成も前向きに考えていきたい」と話している。
下川町は、13日現在の出没件数が136件で、前年同期比6件増。駆除頭数は同比2頭増の16頭。被害状況をみると、デントコーン食害など農作物を中心に例年よりも増えている。
町内では、市街地にある認定こども園付近で出没したこともあるため、出没が想定されるエリアも含めて電気柵の設置、緩衝帯での草刈りなどを進めている。
さらに、地域おこし協力隊制度を活用したハンター隊員を2人委嘱して人材育成にも取り組んでいる。
緊急銃猟制度について担当する町産業振興課は「環境省主催の訓練を実施した他、マニュアルも作成しており、来年度からの運用を検討している」と積極的に進めていく考えだ。
美深町は、13日現在の出没件数が44件で、前年同期比16件の増。駆除頭数は同比4頭増の18頭。出没、駆除とも増加しているが、被害はデントコーン食害などの農作物を中心に例年並みとのこと。
安全対策として、「春期管理捕獲」を実施している他、防災端末や「ひぐまっぷ」を活用した出没情報の周知などに取り組んで、注意喚起に努めている。
緊急銃猟は検討中で、実施する可能性があるとのことで、人命を守るための対策を強化していく考えだ。
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