第7回 合併後の財政
合併後の財政について考えてみる。第2回でも述べたように、合併前の風連町、名寄市は、地方交付税の削減が大きく、財政問題は合併の判断に大きな影響を与えた。
国は「地方公共団体の財政の健全法に関する法律を2007年6月に公布し、09年度から全面施行した。同法は、夕張市の財政破綻などもあり、地方自治体の財政破綻を未然に防ぎ、健全な財政運営を促すことを目的にしている。
合併直後(06年度決算)と公表されている直近(23年度決算)の名寄市の財政状況について、上川管内の士別市、旭川市、富良野市の状況も含めて検証する=表1。
合併直後の名寄市の状況は、両市町とも普通建設事業費の割合が高かったこともあり、歳出に占める公債費(地方債の元利償還金)の割合が高かった。財政の健全化法に基づく新たな指標となった「実質公債費比率(一般会計などが負担する公債費の元利償還金やそれに準ずる経費が、標準財政規模に占める割合)」が18・8%と、高かった。18%を超えると地方債の発行は総務大臣の許可が必要となり、公債費の適正な水準を目指すため、「公債費負担適正化計画」を策定した。
同計画の策定により、実質公債費比率は09年度に17・9%と、初めて18%を切った。その後、次第に減少し23年度は9・9%となっている。なお、実質公債費比率は、25%を超えると「早期健全化団体」、35%を超えると「財政再生団体」となる。
地方自治体が将来にわたって負担する可能性のある実質的な負債の額を、標準財政規模に示す割合を表す「将来負担比率」は、同法に基づき07年度決算から導入された。350%を超えると「早期健全化団体」となる。名寄市の07年度決算は163・1%と比較的高かったが、次第に減少して23年度決算では9・3%となっている。
借金に当たる地方債残高は、大型事業の実施などがあるものの、合併後の17年間で微増にとどまっている。これは、財政計画で地方債の発行額を一定額以下に抑えていることが大きい。また、有利な起債である合併特例債や過疎債をできるだけ適用していることもあり、後年度(元利償還金の返済時)に地方交付税措置がなされ、交付税総額は17年間で21億7600万円(率にして27%増)増加している。名寄市には、市立大学と市立総合病院があることも大きい。
また、貯金に当たる基金残高は、17年間で66億9100万円増加しており、人口1人当たりの金額は34万3000円(23年度)と、管内4市の中では最も高い。
行財政改革推進の効果などもあり、合併直後の厳しい状況から好転している。
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〈士別市〉
士別市は、名寄市より半年早く、05年9月1日に旧朝日町と合併した。名寄市と同様、合併直後の06年度決算は、実質公債費比率が17・2%と比較的高い。歳入・歳出総額、地方債残高、基金残高は、名寄市とさほど変わらない。
一方、23年度決算については、実質公債費比率が14・3%、将来負担比率が98・3%と、4市で最も高い(悪い)。地方債残高は若干減っているものの、基金残高は微増にとどまり、他の3市が大きく増加しているのとは対照的だ。人口減少率も最も高く(▲23・7%)、地方交付税の伸び率(15・6%)も名寄市より低い。
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〈富良野市〉
富良野市は、平成の大合併では合併せず、単独で市政運営している。以前は、過疎地域から除外されていたが、2020年の国勢調査の結果、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別法」に基づき、22年4月1日付で過疎地域に指定されている。
06年度決算における歳入・歳出総額は140億円前後で、合併していないため、名寄市や士別市と比べて人口の割に規模が小さい。実質公債費比率は13・5%と、4市の中では一番低い。地方債残高、基金残高も低く「借金も貯金」も少ないと言える。
23年度決算では、実質公債費比率が8・5%、将来負担比率が49%といずれも低くなっており、改善がみられる。地方債残高は15%程度増加しているものの、基金も3・2倍と大きく増加していることから、バランスが取れている。
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〈旭川市〉
4市の中で唯一の中核市で、過疎指定を受けておらず、名寄市、士別市、富良野市と比較して人口規模が違うので、単純な比較は出来ない。
06年度決算では、実質公債費比率が16・3%と比較的高く、地方債残高に比べて基金残高が低い。決算が1400億円を超える規模で、基金全体の額が47億円。財政運営は厳しかったと思われる。
23年度決算では、実質公債費比率が8・9%、将来負担比率が82・8%と、いずれも改善され低くなっている。地方債残高は12・9%減少しており、基金残高は3倍の141億円と大きく増えていることから、健全化は進んでいる。
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名寄市を含めた管内4市の財政状況について、06年度と23年度の決算を用いて検証した。
国勢調査における15年間の人口減少率は、旭川市が最も低く(▲7・2%)、名寄市(▲13・7%)、富良野市(▲15・7%)と続き、士別市が最も高く(▲23・7%)なっている。人口減少は、市税や地方交付税に大きく影響する。
財政の健全化を判断する指標として、実質公債費比率と将来負担比率は、重要な判断材料となる。現時点で最新の23年度決算では、公債費の将来への負担割合を示す将来負担比率は、名寄市が突出して低く9・3%。実質公債費比率は士別市が14・3%で最も高い。名寄市を含めて3市は10%を切っている。
地方債残高は、富良野市が15・1%増加しているが、旭川市は12・9%減少。名寄市は微増で、士別市は微減となっている。一方、基金残高は、名寄市(3・5倍)、富良野市(3・2倍)、旭川市(3倍)は大きく増加しているが、士別市は微増の1・1倍となっている。
このように、公表されている中で最新の23年度決算をベースに財政状況を総合的に判断すると、名寄市、富良野市、旭川市は財政の健全化が進んでおり、士別市については、道半ばであると言える。
最近の物価高もあり、また、今後は、多くの自治体で、老朽化した公共施設や上下水道などの大規模な更新工事が想定されるので楽観はできない。引き続き、財政健全化の取り組みが求められる。

