地域住民の命と暮らしを守る「名寄市立総合病院」4

地域医療連携推進法人・医師の働き方改革
医療法の改正により、地域医療連携推進法人制度が創設され2017年4月2日から施行された。医療機関相互の機能分担と業務の連携を推進し、地域医療構想を達成するための一つの選択肢として創設され、背景に、地方では医療サービスの消滅、都市部では医療機関の共倒れなどの危機感があったと想定される。
同制度は、複数の医療機関などが法人に参画することで、競争より協調を進め、地域の効率的な医療提供体制を目指すことを目的にしている。名寄市病院事業(名寄市立総合病院)と士別市病院事業(士別市立病院)で一般社団法人を設立し、両法人による地域医療連携推進法人「上川北部医療連携推進機構」が、20年9月1日に北海道知事から認可された。その後、本年1月30日開催の上川北部区域地域医療構想調整会議の中で、新たに名寄東病院の加入が承認された。
道内では他に、南檜山圏域の「南檜山メディカルネットワーク」(20年9月1日設立)、遠紋圏域の「オホーツク西紋医療ケアネットワーク」(23年9月同)、富良野圏域の「ふらのメディカルアライアンス」(24年3月同)が地域医療連携推進法人として設立されている。
上川北部医療連携推進機構では、中期経営事業計画を3年毎に策定している。
23年度から25年度までの中期計画では、①法人運営事業においては、薬品・診療材料・委託業務の共同交渉・購入の推進、各病院の経営強化プランの着実な推進など②医療連携事業では、オンライン診療体制の整備、連携業務の効率化など③人事交流・派遣体制整備事業では、医療スタッフのスキルアップ支援など―全部で7項目を掲げている。
上川北部医療圏の人口は、20年の6万1147人が40年には約4万人と予想され、20年で2万人以上の減少が見込まれている。
同推進機構の佐古和廣理事長は、「今後ますます減少する医療需要のなか、急性期から慢性期、在宅医療、介護を切れ目なく持続的に提供するためには、限られた人材を含めた医療資源を効率的に活用することが求められる。医療連携推進法人はそのための手段ですが、正直、その効果を十分発揮できていない状況」と述べる。
また、「医療従事者の資質の向上を図るための研修や医薬品、医療機器等の共同購入などは順調に進んでいる。」と話す一方、「それぞれの参加法人が、経営上の独立性が認められていることが参加のハードルを下げているが、逆に、抜本的改革を行えない要因になっている」と述べる。
今後は、「住民の理解を得ながら、もう少し踏み込んだ議論が必要かと思っている」と、今後の課題などについて語った。
医師の働き方改革
 2018年に公布された働き方改革関連法に伴う労働基準法の改正により、時間外労働の上限規制が設けられており、本年4月から医師、運送・物流、建設業などにも適用されている。 
このうち、一般医療機関における医師の時間外総量は年間960時間以内であるが、救急医療機関や研修などを行う医療機関は、特例(特定労務管理対象機関)として年間1860時間まで時間外が認められる。
特例を受けるためには、医療機関勤務環境評価センターに対して、現状と時間外短縮への取組事項などを記載した申請書を提出して承認を受け、その後、北海道知事に対して特定地域医療提供機関などの申請を行い、知事の認可を受けてはじめて特例水準が適用される。
24年10月現在、北海道内における特例水準の指定状況は、名寄市立病院を含めて19医療機関で、市立病院では、救急科、外科、心臓血管外科、整形外科、小児科、泌尿器科、麻酔科の7診療科が指定を受けている。
特定労務管理対象機関は、指定を受けた後、遅滞なく正式な時短計画を定め、当該計画に基づき医師の労働時間短縮の取り組みを進めなければならない。また、救急医療等で指定を受けた医療機関の特例は、35年度に終了し特例が廃止される予定となっている。
救急などを含めた地域医療の充実と医師の働き方改革という、ある意味、相反することに取り組んでいかなければならない。
(松島)