10年前の来たばかりのハナとの調馬索と乗り運動の特訓振り返る

 筆者は移動手段としての乗馬、林間放牧による森林整備、触れ合いによるセラピーなどを目標に、2015年9月からドサンコを飼い始めた。その1年目の奮闘を振り返る。以下はそのときにつづったコラムである。
 愛馬を調教するときは杭につないで、体の手入れや健康チェック、運動に必要な手綱付き頭絡や鞍などを付ける。
 愛馬が七飯町から来たばかりのときは、杭につないでも落ち着かず、左右に動いていた。手入れのときは馬の全身をブラシで磨き、足を一本一本持ち上げ、ひづめの裏に付着したごみを道具で取り除くが、足を力いっぱい引かないと持ち上がらなかった。頭絡や鞍も素直に付けさせてくれなかった。
 それでも毎日作業を繰り返すうちに、落ち着いて待つようになり、足も合図すると上げ、頭絡の「ハミ」と呼ばれる馬の口に含ませる金属製の棒も、自分でくわえてくれるようになった。鞍は帯を締めるときに嫌がるときもあるが、比較的おとなしく付けさせてくれた。
 馬に8㍍の長い紐を付けて、自分の周りを指示したスピードで円状に走らせる「調馬索」(ちょうばさく)運動は通常、丸馬場で行うことが多いが、筆者は整備する余裕がなく、何もない牧草地で走らせている。
 それでも当初、研修成果もあってか、すんなり指示に従って走ってくれたが、少しずつ馬に自分を見透かされ、従わない場面も出てきた。さらに雨で足場が悪くなると方向転換して反抗。軌道を戻そうと必死になり、むちで追い回したときもあった。
 だがあるとき、方向転換して反抗しても、自分は円の中心で不動を保ち、指示を繰り返した。すると馬が自ら軌道に戻り走り出した。馬を動かすのであって、馬に動かされてはいけないと理解した。
 乗馬も最初はなかなか前進してくれなかった。遠くに行きたがらずに戻ろうとしたときもあった。そういったことが少しずつ減り、行きたいところへ身を任せてくれるようになってきた。「バック」と言えば後ろへ下がってくれる。乗っていると、馬と自分の体が一体になった気持ちになる。2016年1月の段階では、愛馬と共に森へ出掛ける道のりは、まだ険しく、焦らずじっくり絆を深めたいと思って頑張っていたが、その機会は意外と早くその年に訪れることになった。着実に絆を深めていった。
 毎日対話を重ねた1年目の積み重ねが土台となって、今の筆者とハナがあるのだ。

<今回は2016年1月24日付名寄新聞掲載の記事を基に再構成しました>