BOOKLAB.書籍紹介 いまさら恐竜入門

作家(翻訳者等含む):監修/田中康平 著/丸山貴史 マツダユカ 出版社:西東社 出版年:2020

私は研究の合間、ふと息抜きしたくなると北海道大学の博物館へ足を運ぶ。
古く趣のある建物の、すり減った木製階段を登った先には、大きな恐竜・ニッポノサウルスの復元骨格が展示されているのだ。巨大なそれをただ眺めていると、己の疲れや身体的な欲求がちっぽけに思えてなんだか安心する。
恐竜の化石は、地球の悠久なる歴史の一部を私たち人類に示してくれている。今回の『いまさら恐竜入門』では、研究者たちの間でそれがどのように捉えられているのか、ユニークでユーモアあふれる四コマ漫画と共に紹介される。
日本で恐竜研究の最先端の地と言えば、多くの方がフクイサウルスで知られる福井県と予想するかもしれない。
しかし実は、自然豊かな北海道もまた、恐竜研究におけるフロンティアなのだ。本書の監修を務める田中康平は北海道大学出身であり、冒頭で名を挙げたニッポノサウルスという恐竜もかつての帝国大学時代から北海道大学にて研究が進められている。
田中は、子どもたちの素朴な疑問に研究者が答える趣旨の、NHKラジオ「子ども科学電話」に出演する恐竜学者として有名だ。本書においても、その経験から、たいへん理解しやすい表現で恐竜たちの生態を説明してくれる。恐竜ハカセを自負する子どもから、帯に書かれるように全く恐竜について知らない大人までも、読めば皆が恐竜の魅力に引き込まれるだろう。
そしてアニメ化で話題となった「ざんねんないきもの事典」シリーズなどを執筆した丸山貴史による文章もまた、その魅力を伝えるのに一役担っている。恐竜が絶滅したという現象を、コミカルな表現に仕立てあげるのだ。
そしてマツダユカのタッチで描かれる恐竜たちは、どこか惚けた表情だ。物言わぬ骨となる以前の姿を生き生きと、親しみやすく表現している。
本書の構成は、マツダの四コマ漫画が右ページに描かれ、丸山の文章が左ページに載せられるという、見開きの形となっている。一コラムにつき一ページという情報のまとまりや、独創的な切り口の章立てによって、専門家の知識に触れることへのハードルを引き下げているのがこの本の最も優れた点だ。
読者は、気軽に恐竜たちの世界へと踏み入れることができる。小難しい学問という気後れを減らし、ちょっとした雑学として読みやすくするという工夫が、至る所に施されている。情報の正確さというよりは、誰でも読めるという意味で入門書として最適な書籍だ。
退屈な出勤中や、今日は頭を休ませたい日。そんな時に、一ページだけでも完結する本書を持っていると、少しの優越感に浸れるだろう。恐竜たちの生活を垣間見ることで、気晴らしをしてみてはいかが?

書き手:小松貴海
参考資料:北海道大学総合博物館ホームページ,古生物標本の世界,小林快次,https://www.museum.hokudai.ac.jp/display/syuzouhyouhonnosekai/paleontologyspecimenroom/