【名寄】
名寄市立大学(家村昭矩学長)社会福祉学科1年の谷本愛珠〔あいす〕さんは、一部で介助を受けながら、車椅子で元気に通学している。谷本さんに学校生活、買い物などの日常生活について話を聞いた。
谷本さんは2007年1月、愛別町の生まれ。3月に旭川志峯高校を卒業、4月に同大学に入学した。
中学生までは、通常の日常生活を送っていたが、高校1年生の冬、右手と右足にまひ症状が現れた。高校時代には3回倒れ、救急車で病院に運ばれている。3年生の夏になると、右手と両足の感覚がなくなりはじめ、車椅子での生活を余儀なくされた。この間、右手はリハビリで回復してきたが、両足のまひは現在も続いている。
現在も通院しているが、確定診断はされていない。社会福祉協議会の職員と相談しながら、身体障害者手帳の取得を目指している。また、社協からは、使いやすい車椅子の貸与を受けている。
名寄市立大学に入学した理由については、中学生時代から「特別支援学校で、子どもたちに教えること」が夢だったため、特別支援学校の教員免許取得を目標にしている。
同大学の学生課によると、車椅子対応の学生を受け入れるのは初めてとのこと。
受け入れに当たっては、障害者差別解消推進委員会を開催し、必要な車椅子の台数確認、修理や回収が必要な箇所の洗い出し―などを協議・確認。トイレの自動ドア化やスロープの手すり延長など、必要な改修工事を実施した。
谷本さんは、学生寮に入寮して、車椅子で通学している。高校時代は吹奏楽部に所属し、大学入学後は、手話、図書館、SO、子ども食堂の各サークルに所属している。
大学生活については、「仲の良い友達が数人います。大半のことは自分自身でやっています」と話し、「2号館の昇降機の乗り降り、教室内のグループワークの際の移動などは、手伝ってもらっています」と笑顔を見せる。
冬期間の移動は、タクシーの使用を予定している。
障害者差別解消推進委員会の委員長を務める工藤慶太保健福祉学部長は「他大学での車椅子学生の支援状況把握、入学前の本人及び保護者との面談、学生寮への入寮、車椅子での移動が可能なカリキュラムの編成、市障害福祉課との連携などを実施している」と話す。また、「教職員が、本人に『困っていることはないですか』と意識的声掛けをしている」と語る。
社会福祉学科長の永嶋信二郎教授は、谷本さんの入学に当たり「学科会議を開催し、『学生の中での助け合う機運の醸成』などに努めた。多くの学生の励みになってほしい。教職員にとっても、受け入れを通じて、学ぶべきものがある」と語る。
また、図書館長を務める同学科の黄京性教授は、「図書館で勉強している姿をよく見かけ、他の学生にも良い刺激を与えている。文章力もあるので、目標に向かって頑張ってほしい」と話す。
谷本さんは、4月と7月の2回、北海道新聞の「読者の声」に投稿している。
1回目は、支えてもらった人々へのお礼と、大学で特別支援学校の教員を目指すこと。2回目は、買い物などの際の移動手段として、フルフラットバスの普及を願うことなど。
谷本さんが、買い物などの際に利用しているイオンバスの乗降に立ち会った。
名士バス株式会社の南原眞一社長によると、イオンバス(徳田~イオン線)はワンステップバスで、運転手が乗降の際にスロープを設置して、車椅子を押して乗車してもらう。
谷本さんは「運転手の介助と乗客の配慮が必要で、いつも、もどかしさ、申し訳なさを感じる」と話し、「フルフラットバスは、車内の通路に段差がなく、障がい者や高齢者も移動しやすい。早く普及してほしい」と願う。
フルフラットバスについて、南原社長は「雪国でもある北海道で、運行するのは難しい」と話す。
障がい者や高齢者が、気兼ねせずに一人でも移動できるように、できるだけ早い時期の導入を願うばかりだ。


名寄新聞の購読をご希望の方は以下のお電話・FAXまたはメールからお願いいたします。
※地方発送も承っております。お気軽にお問い合わせください
購読料:1,980円(1ヶ月)
TEL:01654−2−1717
FAX:01654−3−2181
MAIL:web-regl@nayoro-np.com