王子マテリアと賃貸借契約締結 株式会社まちづくり名寄 倉庫2棟を物流拠点に 7月から1棟の運用開始予定 10月に本格稼働、跡地活用の第一歩

【名寄】

王子マテリア名寄工場の跡地活用がスタートすることになった。株式会社まちづくり名寄(社長・藤田健慈名寄商工会議所会頭)は、同工場跡地の倉庫2棟を賃貸借する契約を王子マテリア株式会社と締結。現在、電気設備や消防設備の改修工事を行っているとともに、倉庫を転貸する契約の交渉を運送事業者と進めている。倉庫は物流中継拠点として活用し、早ければ7月から1棟の運用を開始、10月までにもう1棟を運用させ、本格稼働する予定としている。
同工場は1960年4月、天塩川製紙として設立し、61年2月から操業開始。北見パルプと合併し、79年4月から北陽製紙。王子建材工業などと合併し、2002年10月から王子板紙名寄工場。社名改称で12年10月から王子マテリア名寄工場となり、段ボール原紙や特殊板紙などを生産してきたが、19年10月に王子製紙苫小牧工場への集約が発表され、21年12月1日で生産を終了した。
生産関連の建屋は22年夏から解体工事が始まり、昨年秋までに終了。工場全体の敷地面積は22万平方mで、現在は倉庫が残る他は更地が広がっている。
同工場の操業終了後は、跡地活用が大きな課題となっており、名寄市では物流拠点化をはじめ、再生可能エネルギー発電(木質バイオマス発電)、データセンター設置の3本を柱に掲げている。
そのうち物流拠点化に向けて動き出すことになり、まちづくり名寄は王子マテリアと今年5月1日、同工場跡地の北東側にある倉庫2棟と倉庫周辺敷地の定期賃貸借契約を締結した。契約金額は非公表。契約期間は10年間だが、再契約で延長もあるとしている。
まちづくり名寄は、「名寄市立地適正化計画」の具現化で官民連携事業の考え方が示されたことから、民間側の受け皿として名寄商工会議所が出資し、20年10月に設立した。
倉庫本体の面積は2棟とも6千平方mで、合わせて1万2千平方m。倉庫周辺も含めた敷地面積は2万4千平方m。
倉庫は段ボール原紙の保管で使用されていたが、付随の電気設備や消防設備は当時の工場独自の発電や消防用水など自前で賄っていたため、新たに物流拠点施設として利用するためには設備を改修することが必要となっている。
現在、まちづくり名寄が「名寄市企業立地促進条例の特例に関する条例」による補助を受けながら工事費用を負担して、建築基準法や消防法(消防用水槽、自動火災警報装置の設置など)に適合させるための改修工事を行っている。
同特例条例は、同工場稼働停止による経済的損失から地域経済を再生させ、雇用創出を図ることを目的として22年9月に制定。27年3月31日までの時限立法で、区域を同工場跡地に限定し、施設整備費用への補助率を80%、補助上限額を4千万円(常時雇用者5人以上は9千万円)に引き上げる措置を講じている。
まちづくり名寄では同時に、倉庫を転貸するための契約の交渉を倉庫運用のノウハウを持っている運送事業者と進めており、今月末までに交渉を成立させた後、早ければ7月から1棟(1999年完成)の運用を開始予定。電気設備や消防設備の改修工事を全て終わらせて、10月までにはもう1棟(92年完成)を運用させ、本格稼働する予定としている。
倉庫は名寄など道北地方と札幌や苫小牧など道央地方との物流中継拠点施設として活用し、荷物を保管することにしており、トラックドライバーの労働時間上限の「2024年問題」対策にもつなげていく考え。
まちづくり名寄では「物流拠点化構想の一翼を担うことができればと思う。跡地利用が大きな課題であり、やっと手が付いた」と語っている。
生産終了から2年半、解体終了から半年ほどを経て、一部ではあるが、目に見える形で跡地活用の第一歩となることから、期待が高まっている。