若年ハンター育成が課題・本紙管内の春クマ対策 名寄と美深で捕獲実施、下川は環境整い次第 人里への出没抑制など強化

【名寄・美深・下川】

本紙管内の名寄市と美深町は、ヒグマの人里への出没抑制などを目的とした「春期管理捕獲」を実施する。実施に伴う道の補助制度を活用するのは名寄が2年目、美深町は初めて。駆除・捕獲だけではなく、高齢化などで課題の若年ハンター育成にもより一層力を入れる。下川町はハンター育成などの環境が整った段階で実施する意向で、3市町ともヒグマ対策の基盤を強化して住民の安全安心な暮らしを守る。
道は昨年から、警戒心の薄いヒグマが人里に出没している状況を踏まえ、廃止していた春期のクマ駆除規制を緩和。冬眠明けの個体などをターゲットとし、「春期管理捕獲」と位置付けた人里近くに生息する親子グマの駆除や穴狩りを解禁した。実施期間は残雪期である2月1日から5月31日まで。
各市町村や捕獲団体などが道の許可を得て実施するもので、親子連れ捕獲や穴狩りを実施する場合、人里から約5kmを目安に地域の実情に応じて最大10kmまでとした範囲で行う。
また、道は春期管理捕獲支援事業補助金交付要綱も定め、捕獲従事者への報奨をはじめ、各種研修や資材購入経費などを半額補助し、市町村が行う捕獲の取り組みを後押ししている。
本紙管内の名寄、美深、下川の3市町では、人命を最優先とした被害防止を基本に、誘因物の除去周知や緩衝帯(草刈り)、電気牧柵設置補助支援などの対策に取り組んでいる。
名寄市と美深町は従来の対策に加え、今年は春期管理捕獲実施による道の補助制度を活用して体制強化を図る。
昨年に引き続いて2年目の実施となる名寄市は、「昨年はハンターの育成を主に取り組んだ。今年は育成と併行して人里周辺の見回りなどを3月と4月に行う予定で、市の担当者は「現在、具体的な実施に向けてハンターの出動内容などを調整している」と話す。美深町も同様に取り組む予定。
下川町は昨年に引き続き今年も実施しない。町の担当者は、残雪期の実施が主になるとした上で、「町内の若手ハンターが道外出身者で、雪山スキーに慣れていない。ベテランハンターも高齢化しているため、雪山入山の負担が大きい」と、実施しない理由を挙げた。
一方で、若手ハンターの雪山スキー訓練を進めており、「ハンターの体制が整い次第、実施していく方向」と話す。
住民の命と安全安心な生活を守るため、ハンターは欠かすことのできない重要な存在。高齢化などに伴う若年ハンターの育成は大きな課題だ。
名寄市は毎年、北海道猟友会名寄支部の名寄部会と風連部会から推薦された市内在住の支部員をヒグマ駆除隊員に委嘱。本年度は14人を委嘱しているが、平均年齢は73歳と高い。
さらに、市内では昨年、名寄高校付近や名寄中学校グラウンド西側、曙地区、日進橋付近など、人の生活圏域で数多くの目撃、痕跡情報があった。人的被害はなく、市の担当者は「人数も含めて、各状況に対応した出動ができている」などと話す。
美深町は、美深町猟友会の6人と美深猟友会の8人、わな取扱者2人を美深町鳥獣被害対策実施隊員に委嘱し、捕獲や駆除などに当たっている。
両会を合わせたハンター14人の平均年齢は55歳で、近年は40代の若手が増えつつある。町担当者は「他町村と比べて高齢化、人手不足というわけではないが、今後も若手が入ってもらえれば」と話す。
下川町は、下川猟友会の14人が中心的役割を担い、そのうちの6人が駆除・捕獲に従事。同会員の平均年齢は51歳。
担い手確保の対策として、地域おこし協力隊員の導入(2人)、銃猟免許や銃所持許可の取得経費を支援する「下川町有害鳥獣捕獲従事者育成支援補助事業(補助対象は町民)」に取り組んでいる。
ヒグマによる被害は、一歩間違えると人命にかかわる大きな事故につながりかねない。ハンターを充実させた体制と人里に近づけさせない対策の強化はより一層重要性を増している。