第12回 加藤剛士市長に聴く
加藤市長に合併後の20年について、合併した当時の市長自身の状況、2010年に市長に就任して以来の市政の推進、まちづくりなどについて話を伺った。
──今年は風連町、名寄市が合併して20年の節目の年です。合併当時は、どのような立場で、合併協議の状況を見守っていましたか。また、風連地区では、慎重・反対の声もあり、住民投票が実施されました。これについてはいかがですか。
加藤 合併当時は、小泉純一郎内閣による国の三位一体改革により地方交付税が削減され、それに合わせて市町村合併も推進されたと思っています。当時は、青年会議所で大学4大化推進の担当委員として、短大の4大化に向けた取り組みを推進していました。2003(平成15)年の6月定例会で、4大化一時凍結の話が出た際は、地元新聞に推進の広告を掲載して市民に訴えました。その後、4大化推進の方向に向けた動きが加速していったと思います。
4大化と合わせて合併の議論をしていたと思います。当時、風連町では、道の駅構想、本町の市街地再開発、風連中学校の風連高校への校舎移転―の3点が合併の議論になっていたように感じています。国の三位一体改革で、財政は相当厳しかった。そのような中で、「名寄に飲み込まれるのではないか」―などの意見は住民の中にあったと思います。結果として住民投票が実施され、風連町は合併を決断したのではないかと思っています。
合併後も、財政状況が厳しい中、これだけの大型事業を実施できたことは、職員の給与削減、負担金・補助金の見直しなど、聖域なき行財政改革を実施できたからで、当時の島多慶志市長のリーダーシップと、市職員、関係団体など多くの皆さんの理解と協力があったものと思っています。改めて、当時の皆さんの苦労に感謝したいと思います。
──島市長の後を受け、2010年4月に市長に就任されました。就任当初から、風連地区、名寄地区の均衡ある発展に努力されてきたと思います。どのような思いで、市政の推進にあたられましたか。
加藤 市長就任の際、風連地区では相当の議論があったことを承知しており、それなりのしこりが残っていることも感じていました。就任時は、何よりも風連、名寄の一体感の醸成が大切だと思い、人事配置でも風連地区の副市長を継続しました。厳しい財政状況もあり、大きな投資ではなく、現在ある財産・ポテンシャルを生かして、まちづくりを進めていくことに心がけていました。その後、行革効果などもあり、財政的にも一段落つき、ハード面で食肉センターの改築、よろーな、市立総合病院の増改築、エンレイホール、大学図書館及び新棟、農協の施策への支援など、必要な大型事業を実施することができました。小中学校の改築も順調に進み、東中学校の移転で概ね終了します。
就任後、当初は肌感覚として旧風連、旧名寄などの意識があったと思いますが、次第に合併以降に採用された新しい職員が増えてきており、現在はほとんど感じません。
──全国の合併した市町村の中では、「合併で寂れた」「人口が減った」などの声も一部では聞かれます。名寄市の合併では、どう思われますか。
加藤 合併により「人口が減少した」「寂れた」とは思っていません。他の自治体のことは分かりませんが、一体感が醸成されつつあると思っています。とりわけ、象徴的なのは1次産業である農業です。合併の少し前に、風連、名寄、智恵文の3農協が一つになってJA道北なよろが誕生し、風連に本所が置かれました。1つの行政に1つの農協―これは大きかったと思っています。
また、合併と直接かかわることではありませんが、風連地区から中野秀敏道議が選出され、先般の参議院選挙では東野秀樹さんが国会議員に選出されました。はっきりとは分かりませんが、合併があったから誕生したのかもしれません。風連地区からは、優秀な議員が選出されています。
ここにきて、スポーツ団体の統合には大変苦労しました。風連地区の団体の方が、子ども達の将来に対する思いもあってか、積極的に議論に参加してくれました。苦労しましたが、統合することができました。
──風連地区、名寄地区とも、近年、人口減少は予想を超えるスピードで進んでいます。ある意味、名寄市の最大の課題だと思います。今後も、人口減少は続くと思いますが、スピードを緩める対策、現状維持となるような対策についてはいかがですか。子ども達が夢をもてるようなまちづくりについてお願いします。
加藤 急速な人口減少と合わせて、昨今の急速な物価高騰は、特に、地方の財政を圧迫していると感じています。市長就任以来の厳しい財政状況だと思っており、今回、改めて振り返ってみる良い機会となりました。就任以来、メリハリをつけて行革に取り組んできました。2026年度予算編成においても、一般財源ベースで5億円を削減する指示を職員に出しています。公共施設の再編・統廃合、負担金・補助金の見直しなども出てくるのではないかと思っており、市民の皆さんにも持続可能なまちづくりのために、理解していただきたいと思っています。一方、削減ばかりではなく、そこで生み出された財源を、より効果的な施策の推進に投資をしていきたいと考えています。
予算編成方針では、基本的な考えを3点挙げ、加えて集中的重点事項を掲げました。そのうちの一つが、付加価値の高い産業の育成です。今までの名寄が持ってきた自然、産業、交通の要衝を生かした地の利―こうしたものを生かした1次産業の振興、付加価値を高める取り組みを進めたい。
次に、長い目で見て「人への投資」です。地域愛にあふれた、名寄ならではの教育、スポーツ・文化、子育ての推進、英語教育などを考えています。付加価値を高める産業の育成で人を育て、人を育てることで、長い目で見て人が集まってくる―と考えています。
中学生、高校生、大学生など若い世代に、ここで学びたいと思ってほしい。そのことが、ひいては、人の定着、人口維持につながって行くと考えています。
子育て支援では、「あいあい」の中にこども発達支援センターなども入れて、新たに整備しました。幼児から小学生までの子育て支援については、引き続き実施していきます。一方、出生率の向上など少子化対策については、国がしっかりと実施してほしいと思っています。その中で、自治体としてやれることは実施していきます。
商工会議所が中心となった地方創生会議からも、多くの提言をいただきましたので、策定中の第3次総合計画の中に取り入れていきたい。「選択と集中」―、取捨選択しながら施策を進めていきたいと考えています。
──最後に、10年先、20年先を見据えた今後のまちづくりについてお願いします。
加藤 国の三位一体改革(税源移譲、国庫補助負担金改革、地方交付税改革)について、自分なりに総括をすると、地方交付税は削減され、その延長線上に市町村合併が推進されました。色々なデータを見ても、結果として、大都市と地方の格差を広げたと思っています。本当の意味での地方創生を、国や道に求めていきたいと思っています。
最近は温暖化がより一層進んでいます。北海道は、地政学的にも優位性があります。名寄は、道北の中核都市としての責任、使命があります。そのことを果たしていくことが、名寄の存在感、歴史的な役割だと思っています。
毎年、10~11月に市内の小中学校を訪問して子ども達と交流し、最後に一緒に給食を食べるのを楽しみにしています。風連中央小の6年生からは、まちづくりについての提案を受けました。若い世代が夢や希望を持てるまちづくりが、持続可能なまちづくりにつながって行くものと思っています。

